中古品
クレーだったかカンディンスキーだったか、「白いカンバスは怖ろしい」と言った画家がいました。 その怖さを乗り越えるため、カンバスにわざとシミをつけてから描きだすのだとか。
新品のものをおろすとき、いつもその言葉が頭に浮かびます。 新しいものはなかなか使えない。 初雪を踏みしめる後ろめたさにも似て、使用することによりその完璧さが踏みにじられるのが怖いのです。
その点、中古で手に入れたものは気がラクです。 もともと完璧ではないだけに、買ったらすぐに使える気安さがあります。 だからわたしは中古が大好き。 新品のものをおろす胸の痛みをスルーできる上、 新品時より安いのが魅力で、本でも食器でも衣類でも、まずは中古を探します。
但し、中古は選ぶときに吟味が必要。 新品の個体差は微々たるものですが、中古は個体により状態が様々だからです。 でもそれだけに、じっくり見て選ぶので、買ったときにはもう愛着が生まれています。
中古で買ったものは、不要になったときの処分もラクです。 適正な価格で手に入れてさえいれば、購入時とそれほど変わらない価格で売れるから。 買値との差額は自分が使った分の使用料のようなもの。 モノを「所有する」ことにではなく「使う」ことにお金がかかる。 なにやら非常に真っ当な気がするそのすがすがしさもまた、中古の状態で買うのが好きな理由の一つです。
初稿:2007年5月3日