最後の決め手

日差しと影

電化製品や家具など値の張るものを買うとき、 わたしはよく比較対照表を作ります。 商品に求める条件を縦、候補となる商品を横に並べ、 性能やサイズ、価格など各条件における満足度を◎○△×で示します。 頭の中だけで考えると混乱してしまいがちな一長一短も紙に書くと整理がつきます。 もし迷ったら、◎が一番多いものを選ぶ。 そうすると失敗がありません。

ところが意外にも、もっと大きな買い物、たとえば家などは違うんですね。 比較対照表は作りますが、あくまで参考程度。 最終的には◎の数より、たったひとつ突出した魅力があるかどうかが最後の決め手となります。

家を買った友人に尋ねても、物件購入の決め手に「駅が近い」「買い物至便」などを挙げる人は少なく、 「どこそこの花火が見える」とか「建物の作りが面白い」といった些細な特長を嬉々として語る人が多いもの。 利便性や広さなど、住まいの本質ともいえる諸条件を満たしているかどうかのチェックは大切ですが、 大きな決断をするにはそれだけでは足りない。 「その物件ならでは」の魅力に、少々度を失うことで、人はやっと決断を下せるのでしょう。

時にはそうした魅力のおかげで優先順位が逆転することも。 でもきっと、それでよいのです。 オンリーワンを手にいれた嬉しさは、ちょっとやそっとの優位性より、ずっと人を幸せにするからです。

初稿:2008年3月6日

<<<   index   >>>