2003年3月15日 となりのトトロ

「となりのトトロ」でわたしが一番好きなのは、 病院に入院しているお母さんが物語の終わりの方で 「さつきなんか聞き分けがいいから、なおのことかわいそう」と言うところです。

「となりのトトロ」というお話は、姉のさつきと妹のメイが主人公なのだけれど、 どちらかというと妹のメイが中心となって話が展開します。 トトロを最初に見つけるのもメイだし、 話が急展開するのもメイがお母さんに会いに行こうとするところから。
ひたむきでいじらしい小さなメイと比べると、 お姉ちゃんのさつきはおとなしくていつもいい子、そしてちょっと影が薄い感じです。 お母さんに会いたくても、メイのように行動を起こしたりはしません。 もしもみんながさつきみたいな子だったら、 きっと世の中、何も変わったことは起きないんだろうね。

だけど、表情に出さなくても、行動に出さなくても、 お母さんが入院してて寂しい気持ち、不安で押しつぶされそうな気持ちは さつきも変わらない。 ううん、外に出ない分、もしかしたらメイ以上に辛いかも。
なのにトトロに最初に出会うのはメイ。なんかズルイよね。

だいたいがお姉ちゃんという存在は、いつだってさつきみたいな役回り。 小さくて皆の目を集める妹の引き立て役に回る宿命を背負っているみたい。 後から生まれてきた妹に、おやつでもオモチャでも、いつも先を譲らなくちゃならない。
そんなことを考えながら、トトロを見ます。

みんな、さつきのことも見てる?
誰よりお母さん、小さなメイのことだけじゃなく、さつきのことも考えてる?

そんな心配をしながら見ます。
だから、「さつきなんか聞き分けがいいからなおのことかわいそう」 って言うお母さんの言葉でやっとホッとするの。
お母さん、ちゃんとさつきのこと分かってくれてたんだな、って。 表情に出さなくても、行動に出さなくても、さつきだって辛いんだってこと、 ちゃんと分かってくれてるんだな、って。

お母さんはちゃんと分かってくれていた。
だからわたしは「となりのトトロ」というお話が好きなのです。