2003年9月6日 横浜散策

横浜限定発売パスネット

今日は、きりんとチャアとうさぎの3人で、横浜中華街を散策してきました。

横浜の端っこに住んでいるうさぎ、 あんがい横浜らしい横浜に出かけることはありません。
中華街に行ったのも、何年ぶり‥?
今日も、たまたま近くでバレエ用品のバーゲンセールがあったから寄ったのです。

でも中華街って面白いんですね。まるで日本じゃないみたい!
こんなにチャイニーズした街だったかしら?
ただ中華料理や中華用品のお店が並んでいるだけじゃないんですね。

今日はまず北門から入り、中華街本通りを歩きました。 100円のフカヒレコロッケを食べながら。
街は土曜日とあって、 店の前で呼び込みをする売り子や、時々立ち止まって写真を撮る観光客で賑わっていました。

ああ、本当にここは日本じゃないみたい!
右から左に漢字で書かれた看板、たどたどしい日本語での呼び込み、 時おり薫ってくるビャクダンの香り‥。
おみやげ屋さんで手招きをする金色の招き猫、 黄金の昇り龍がついたチャイナドレス、 店々の壁に掲げられた「恭喜発財」の文字。 この臆すところない明るい商売っけは、ゼッタイ日本じゃない!

しばらく歩いてちょっとわき道に逸れたら、人通りが極端に減りました。 お店の構えも、本通りの都会的でバリッとした感じから、どこか懐かしい雰囲気に。
お店の前では大きなニャンコがのんびり昼寝。 それを見てたら、店の主人がチャアを手招きして、カタコトの日本語で言いました。
「このネコ、ヤサシイ。なぜてもダイジョブ」

関帝廟通りを歩き始めると、そろそろお腹が空いてきました。 なので、「どこか気軽に入れる店はないかしら」と、探しながら歩きました。
中華街は観光客の街。 豪華な料理を豪華な値段で提供する店が多くて、気軽に入れる店はあまりないみたい。 2000円で食べ本題もいいけれど、今日はそれほどお腹がすいていないから、 普通のランチを普通の価格で食べたいのだけれど――。

しばらくお店を探しつつ歩き、中国のお寺、 関帝廟 の前にやってきました。 細かい細工に鮮やかな色を施したきらびやかな屋根が、やっぱり中国。
「ここもやっぱり日本人観光客でいっぱいねー」と自分で言って、思わず笑いました。
なにが「日本人観光客」‥。ここは日本でしょうが!

関帝廟の隣りは、横浜中華学院でした。 1897年に孫文が開いた、由緒ある学校です。 関帝廟の境内から覗いたら、校訓を掲げた校舎と、コンクリート貼りの校庭が見えました。 制服や体操着を着た子どもたちが遊んでいます。
何語を喋っているのかな? 中国語かな?
耳を澄ますと、日本語が聞こえてきました。

関帝廟通りからまたわき道に入ると、そこには珍しい果物を売る店が何軒か並んでいました。 ドラゴンフルーツ、ランブータン、マンゴスチン‥。
それに、栗を売る店がたくさん。 売り子が道の真ん中で、試食の栗を配っていました。
勧められるままに、いろんな店の売り子さんから一つづつ、貰っては食べ、貰っては食べ‥。
5つ目を貰った頃、きりんが言いました。

「一体なんなんだ、この通りは! 焼き栗通りかっ?!」

試食の焼き栗を食べ、試飲の紹興酒を飲みつつ広東道に出て、また別のわき道に入ると、 980円のランチを出しているお店を見つけました。
「あ、これいいかも!」と思いつつ、もう少し歩くと、 600円のランチを出しているお店を見つけました。
「ヨシ、ここだっ!」
‥でももう2時すぎ。 「まだランチをやっているかなあ?」と話していたら、店の中からお姉さんが出てきて、 「マダ、ダイジョブ」と言いました。

隆昌園 というこのお店、小さいけれど、きれいなお店でした。 壁にはまた「恭喜発財」の文字。スピーカーから流れるのは中国語の歌。
それにしても今日は暑い。 小さなコップが空になるたび、可愛いお姉さんが水を注ぎにきてくれます。
「でもこの水、飲んでも平気かしら?」とふと考え、また可笑しくなるうさぎ。
そうだった、ここは日本だった‥。

お料理はなかなかいけました。
うさぎの頼んだあんかけ豆腐には、カニ肉がどっさり入っていたし、 きりんの頼んだ豚肉の炒め物には、フクロ茸が入っていました。 ご飯とスープとザーサイ、それに杏仁豆腐までついて600円(それも税込み!)はお得かも! 満足して店を出ました。

でも、店を出たら、その数軒先でも600円のランチをやっているのを発見! きりんが悔しそうに言いました。
「おおっ、こっちにはエビチリがあったか〜っ! こっちの方がよかったかも‥」
うさぎは別に後悔していませんが。
だってエビよりカニの方が好きだも〜ん!

満腹したところで、「さあ次はどこへ行く?」とチャア。
「まだどこかへ行くの?!」と、呆れ顔のうさぎ。
「なら、"みなとみらい"に大道芸でも見に行こうか?」と、きりん。 「もしかしたらジャグリングをやってるかもしれない」
「ジャグリング?! 行く〜!」とチャア。
そんなわけで、中華街を出たら、うさぎは家に帰り、 チャアときりんは桜木町まで歩いてジャグリングを見に行くことにしました。

と、中華街に出たところで、年配のご婦人に呼び止められました。
「ごめんなさい、石川町へはどう行ったらよいのでしょう」
きりんとうさぎは顔を見合わせました。
「石川町ですか? ここからだとちょっとありますよ。 関内の駅がもうすぐそこだから」ときりん。
「ああ、ここは関内の近くなの? 関内駅でもいいんです。どちらの方角でしょう」とご婦人。
「関内駅でしたら、ご一緒に参りましょう。 わたしもそちらへ向かう途中ですから」とうさぎ。 そう言って一緒に歩き出しました。

ご婦人は、うさぎも持っている1000円のキャリーケースをコロコロ転がしながら ついてきました。
横断歩道を渡っていたら、信号が途中で赤に変わってしまい、 二人とも小走りになりました。 車に向かって「すいませーん!」と手を上げて横断歩道を渡るうさぎ。 ふと見たら、隣りのご婦人が、 「ごめんなさいね、もう少し待っててね」とドライバーに話し掛けつつ、 同じように手を上げていました。 うさぎは、「あ、この方の文化、うさぎと似てる!」と思いました。

横浜スタジアムの敷地を横切ると、スタジアムを見上げてご婦人が言いました。
「あら、ここは野球場?」
ははは‥、野球場?!
‥やっぱりこの方、うさぎに似てるかもしれないと思いつつ、うさぎは 「そうです。横浜スタジアムです」と答えました。

速い足取りで先に行ったチャアたちが、道のむこう側からうさぎに手を振りました。
「あら、お子さんが呼んでらっしゃるわ。行かなくていいの?」とご婦人。
「いいんです。ここからは別行動なので。 あの人たちは、桜木町のみなとみらいに行くんですよ」とうさぎ。
「まあそうなの。みなとみらいって、日本丸のあるところのこと? わたしは今日はその辺から歩きはじめたのよ。フリーマーケットがあったのでね。 でも今日はいいものはなかった。それで中華街でおみやげを買って帰ろうとしたんだけれど、 元町がどっちの方角だったか分からなくなっちゃって‥」
「フリーマーケット?」とうさぎが尋ねると、
「そう、フリーマーケット、大好きなの。 日本丸のより、国際競技場前のフリーマーケットの方がすごいのよ。 た〜っくさん、お店が出るの!」
うさぎは思わず身を乗り出しました。
「へええ! わたしもフリーマーケットは大好き! 国際競技場? ぜひ行ってみたいわ! 次はいつなのかしら?」
「ええと‥、いつだったかしら? 覚えてないわ、ごめんなさいね」
「いえ、いいんです。フリーマーケットではどんなものを買われるんですか?」
「あのね、古いセーターを買って、毛糸にほぐしてもう一度編むの。 それに古着を買ってこんなものを作ったり‥」 ご婦人はほんのちょっとシャツを捲り上げてみせました。

?!
シャツの下には、ポケットがい〜っぱい!

「ふふふ、これ、便利なのよ。 銀行に行くとき、ここに通帳を入れていくの。 そうすれば、ひったくりに合わないでしょ?」ご婦人はそう言って、楽しそうに笑いました。 「でもね、さっき中華街に同じようなものが売っていたのよ。 刺繍がしてあって、もっときれいにつくってあるのが。 わたし、自分で考えたつもりだったのに」 少し寂しそうに付け加えるご婦人。

そうこうするうちに、関内の駅につきました。
「ではわたしはこれで。わたしは地下鉄で帰りますので」とうさぎが言うと、 ご婦人は何かを思い出したらしく、顔をぱっと輝かせて言いました。
「ああそうだ、"ぱど"っていう情報誌、お宅にも入る?」
「? ええ、はいりますよ」とうさぎ。
「よかった。なら、家に帰ってごらんになるといいわ。 国際競技場のフリーマーケットの開催日が載っているから」
そういうと、ご婦人は、うさぎに礼を言って駅の中へと消えていきました。
その後姿を見送りながら、うさぎは思いました。
「きっとあと20年したら、うさぎもあんな感じになるのかな」って。
――うん、いいかもしれない!

うさぎの横浜散策はこれでおしまい。そのまま電車に乗って夕方には家に着きました。
あっと、その前に、「パスネット」を買いましたっけね。 横浜市営地下鉄の駅でしか買えない「パスネット」の期間限定バージョン。 みなとみらいの遠景が写っているのです。

一方、きりんとチャアが帰ってきたのは夜の9時過ぎ。 "みなとみらい"で3時間もジャグリングを見ていたのですって! バーゲンに出かけただけのつもりが、長い長い横浜散策になりました。