私はこれから、この前の発表会で踊った白鳥たち(群舞)について書こうと思います。 白鳥たちという役は、「白鳥の湖」という幕物の第二幕に出てくる群舞(大勢で踊るもの) のことです。
わたしはこの発表会の「白鳥たち」という役で、初めて大人の仲間入りをしました。 白鳥たちは全部で12人(大きな3羽の白鳥、小さな4羽の白鳥を除く)。 そのなかでおとなは10人、子供はたったの2人でした。 8年ほどバレエをやってきて、大人の中に混じって踊るのは初めてだったので、 それはとてもうれしいことでした。
白鳥の群舞も、はじめにやらなければならないのはやっぱりフリを覚えることでした。 でも他のときと違ったことがいくつかありました。
まず1つ目は、舞台の上で他の人が踊っているのを見ている時間がとても長いことでした。
ある決まった体勢でずっと舞台の上で立っているのはとても大変でした。
「止まっているよりも動いて踊っているほうがいい。その方が楽。」
なんて思ったのは初めてでした。
止まっていると、汗が次から次へと体から溢れ出し、
暑くてあつくてしかたがありませんでした。
でもそれは私だけではありませんでした。
大人もそうだったのです。
子供だから大変だったのではなく、ただ単にこの踊りと、この体勢が大変だっただけでした。
これは私にとって嬉しい事実でした。
「子供だって大人だってそんなに変わるわけじゃない。少なくても踊りに関してはそうだ。」
と思えたからです。
2つ目はフリを憶えるだけではダメだったことです。 少人数で踊るときは、大体音楽に合っていれば平気ですが、 大勢だとそうはいきませんでした。 音楽に合わせて、また他の人にもあわせなければなりませんでした。 また踊る位置や足の高さもそうでした。 もしずれているのがちょっとだったとしても全員がバラバラであればとても目立ちます。 縦横をあわせ、他の人とずれないように踊るのは困難でした。 でも、1つ目同様、他の人にあわせるのを苦労していたのは私だけではありませんでした。 しかし私がずれているのはちょっとどころではなく、いつも注意されていました。 他の人に合わせることがこんなにも大変だなんて知りませんでした。
3つ目はフリを間違えられないという事です。 確かに群舞のとき以外でもフリは間違えないほうがいいけれど、 間違えてもごまかしがききます。 でも群舞は違います。 少しでも間違えればすぐに分かります。 それだけではありません。 もし間違えて、恥をかくのがわたしだけならいいのです。 それは自分が間違えたのだから仕方のないことなのですから。 でも群舞では、間違えれば群舞全体のイメージが壊れます。 つまり他の人に迷惑掛がかるという事です。これが私には何より怖いことでした。 自分が他の人の足を引っ張るなんて‥!
いろいろといつもと違ったことがありました。 けれどもやっぱり本番はやってきました。 いつもと違ったのは自分に言い聞かせる言葉でした。
「失敗してもいいから一生懸命に踊ろう!」
これがいつの言葉でした。けれども、今回は違いました。
「失敗をしないように。どんなことがあっても他の人に合わせること」
今はもう本番も終わりました。 今私が思うことは「白鳥たち」を踊る前とは違います。 前は大人と子供の違いを感じていました。 でも今は、人間全ての人の違いを感じます。 そして共通点も感じます。 違いも共通点もうえの3つの中にあります。
皆がこのフリを踊って疲れました。 皆が他が人とあわせるのに苦労しました。 皆がフリを間違えないようにがんばりました。 これは皆が同じだった点です。
違いは、みんなそれぞれ疲れる量は違います。 みんなそれぞれ音楽のとりかた、位置のとりかた、足を上げる角度は違います。 みんなそれぞれ間違えないようにと使う神経の張り方は違います。 これが違いです。
「人間なんだから当たり前。」
確かにそうです。
でも、頭ではわかっているつもりでも
実はわかっていなかったことというのはあると思います。
これは私にとってそういうことでした。
後でいろいろな人に聞いてみるといろんな職業な人がいました。 学校の先生、お医者さん、美容師さん、主婦、学生……etc。 これでは人間だから同じで当たり前のことも、 年齢や職業が違うのだから違って当たり前なこともあるはずです。
すこし前に発表会のビデオが来たので見てみると、出来はまあまあでした。 でも、私は感動しました。 みんなでがんばって練習したのですから。 これはきっと成功したのだと思います。
本当は今まで、群舞なんて見ずに、主役ばかり見ていました。 でもこれからは、群舞も見ようと思っています。 群舞を主役に劣らず大変なことを知りましたから。 もしバレエを見ることがあったら、ぜひ群舞も見てくださいね。