つい先ほどのこと。
「ねー、"リストカット"ってなあに?」と、チャアがパソコンの画面を見ながら皆に尋ねました。
「手首に巻くサポーターのことじゃないの?」とうさぎ。
「違う。もっと怖い意味だよ」とネネ。
そこでうさぎも思い出しました。
「分かった! 手首を切ることじゃない? そうでしょ? 自殺する時に」
「別に自殺したくて切るんじゃないよ」とネネ。
「じゃあどうして?」
「自分に苦しみを与えるために」
「ああ、いわゆる"自傷行為"ってヤツ〜?」
「それにしてもアンタ、やけに詳しいわねえ。
一体どこでそんな言葉を覚えてくるの? 学校の授業?」
「授業? 違うよ。小説とかマンガとかによく出てくる」
「ふーん、物知りねえ」
「別に物知りじゃあないって。友達ともよくそういう話するし」
「‥はい? 友達とそんな話をするの?」
「するよ」
「じゃあいまどきの中学生にとっちゃあ、"リストカット"っていう単語は一般常識なわけ?」
「そうかも」
「それってかなり怖いかも〜」
「‥何で? 言葉を知ってるだけで怖いことが起こったりはしないよ」
「そういうことじゃなくて。そういう言葉が一般常識だっていうことがよ。なんか怖くない?」
「――まあ、そうねぇ。略してリスカ」
「はああ? 略語まであるの?!」
「ここにも書いてあるよー。リスカで友達が死んだんだってさー」とチャア。
「ちょっとアンタ、一体どういうサイト見てるのよッ!」
「‥マグネット」
「明るく楽しいよい子のマグネットにそんな話題があるわけ?」
「あるよー。マグネットの"悩みの掲示板"」
「なにそれ」
「たとえばさあ、こんなことが書いてあるの。
"クラスにKという人がいます。Kは自己中で、この前わたしの親友Mが嫌がっているというのに‥(後略)"」
「‥はあ」
「"この間なんか、KとMとSとわたしで遊んでいたら‥"」
「わかった、わかった、もういいって‥」
おわり