先日、わたしが入っているウェブデザイナーのためのメーリングリストで、 ある企業サイトのトップページデザインを皆で批評するという企画がありました。 それは、オフィス機器を販売する会社のサイトで、 一番の主力商品は「開業セット」(仮名)という、 一通りの機器をセットにして手ごろな価格で提供するパーケージ商品でした。
そのサイトを見て、わたしは以下のような感想をメールで返しました。
最初にこのページの画面を見たとき、「うわ〜、文字ばっかり〜!」と思いました。
文字が多すぎて、どこからどうみていいものやら‥。たぶん、サイトの作りがいけないとかではなく、
わたしがあまり、こうしたビジネスサイトを見慣れていないからだとは思うのですが、
たいていの人はまず「開業セット」を見たいだろうなと思うし、
開業セットに割くスペースやイメージ画像や文字がもっと大きかったら嬉しいかな、と思いました。なんていうか、初めて訪れたサイトでは、
「まずここを見てくれ」みたいなのがはっきりしていると、嬉しかったりします。
とりあえず、そのサイトの流れっていうか、雰囲気を軽く知りたい。
その上で気に入ったとなれば、小さな文字のリンクであっても、探し出してクリックします。最初からたくさんの選択肢を見せられると、面倒くさくなっちゃうんですよね。
だから「開業セット」をまず見て、
「だいたいいい感じなんだけど、もうちょっとここがこうだったら‥」
という段階になったときにはじめて、他の選択肢もいろいろあるんだってことが見えてくると、 嬉しいかなあ、と。この会社の場合、最初に示すべき選択肢は二つだと思うんです。
「開業セット」なのか、「アラカルト(それ以外)」なのか。
まず開業セットを見てもらい、それで過不足があれば、アラカルトへ流れてもらう。
そういう流れが分かりやすくできていると、
わたしのようなずぶの素人でも、より安心して商品を選べるんじゃあないかなあ、と思いました。
けっこう上手に自分の意見を書けたんじゃあないかと思います。 そのページを見て、わたしは本当にこう思ったのです。
でも、このメールを書き上げた瞬間、気づきました。
あっ、自分のサイト、カンペキ棚上げだあ〜っ!
って。
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選択肢の数にも「適量」があるんだってことは、 いろんな場面で思い知らされることです。
たとえば、「どの色が好き? この中から選んで」と、何百色もある色の見本帳を渡されたとします。 そういうとき自分の好きな色を的確にピックアップできるのは 普段からそういった仕事をし慣れている人だけで、 普通の人はどこからどう選んでいいか分からず、途方に暮れるのではないでしょうか。
わたしは元来、選択するのが好きな人間なので、選択肢が多いほうが嬉しいのですが、 そんなわたしでも、あまりにも多くの選択肢をダ〜〜〜ッと並べられたら逃げ出したくなります。 たとえばお店でTシャツの色を選ぶときにベストなのは7〜8色。 10色以上ともなると、選ぶのが面倒になります。 まあ、ユニクロなんかで30色くらいある中から選ぶこともありますが、 「この中から1枚だけ選べ」といわれたら途方に暮れます。 目についた色を手当たり次第に7〜8枚買っちゃったとしてもたいした金額にはならないという開放感のある ユニクロでだからこそできる、といえます。
ウェブサイトの場合も、 最初サイトを開いたばかりの頃は、少ないコンテンツをなるべく多く見せることに一生懸命でも、 コンテンツが増えてきたら、こんどはそれをいかにすっきりと見せるかに知恵を絞るべきではないかと思いました。
つい習慣で「ほら〜、こんなにいっぱいあるんだぞ〜」と見せびらかしたくなりますが、 訪れるほうからしてみれば、 文字がズラズラ並んでいると、なんだか面倒くさくなって帰りたくなる。 何度も訪れていて、どこになにが書いてあるか分かっているサイトならばいいけれど、 初めて訪れたサイトでは、一度に示される選択肢に適量というものがあって、 適量の範囲を大きく超えると、面倒くささだけが気分として残る。 最終的な情報量、選択肢の数は多いに越したことはないとしても、 それを見せるには、工夫が必要だと思うのです。
たとえば、先の色選びの例で、何百色もある色の見本帳から選ぶのは困難だったとしても、 ビビッドトーン、ペールトーン、ダークトーンの3種類から1つを選ぶのは、誰にでもできる。 そして、選んだその中に更に暖色、寒色、中間色の3つの選択肢があるとしたら、 その選択も容易でしょう。
そうやってどんどん選択していって、最終的に1つに絞るのは、そんなに難しくないような気がします。 でも、最初からダ〜〜〜ッと選択肢を一様に並べられちゃうと、どこから取り掛かっていいか分からない。 それは、一年分の仕事を目の前にドンッと積まれるよりも、 その日その日にやるべき仕事を毎日少しづつ渡されるほうが気がラク、というのと同じ原理でしょう。 ウェブサイトの見せ方もそれと同じ、というわけです。
理想を言うならば、
豊富なコンテンツが潜んでいることを匂わせつつ、
「まずはここを見てくれ」というのが分かりやすいサイト
でしょうか。
要するに、メリハリが肝心。
‥なんて書きつつ、自分の
旅行サイト
のトップページを思い浮かべると、絶望的な気分になりますが。
旅行記の数が増えるのがただただ嬉しく、トップページにずらずら並べてはみたものの、
"メリハリ"なんてものは100万光年の彼方。
初めていらした方からしてみれば、まさに「一体どこから見たらいいのやら」状態かも。
ふと気づけば、冒頭のOA機器販売サイトとそっくりだったりなんか‥。
まあ、言い訳しちゃうと、どのページが一番見たいかは人それぞれ、 行きたい国も人それぞれなので、何をどうクローズアップして見せるか、難しいんですけれどね。 ともあれ、なんとかしなくっちゃ、と思った夏の夕暮れであります。
アクセシビリティ (受け入れられやすさ)という言葉は、 "様々なハンディキャップに対応しているかどうか" という意味に使われることが多いけれど、 基本は "不特定多数の一般人にとって、利用しやすいかどうか" ということに尽きると思います。
だからわたしは、その「一般人」の一人である自分の感覚を大切にしたい。 「自分が分かりづらいと感じるものは、誰にとっても分かりづらい」、 「自分が面倒なことは、誰にとっても面倒」という前提に立ちたい。 「一部の専門家」ではなく、「どこにでもいる普通の人」であること、それがわたしの強みです。 音声ブラウザ対応だの、マイナーブラウザ対応だの何だのとほざく前に、 まずはこんなところから、自分(=普通の人)にとって敷居の低いサイト作りを心がけたいと思いました。