kosta bodaのガラス食器URA
ガラスの大皿。(購入元:エミュ・タカラヤ

この皿に出会ってから、もう20年以上。 ようやく最近、その良さが分かってきたところです。

この皿との付き合いは、最初一枚だけ、直径25センチの大皿をいとこのエミちゃんにもらったのが始まりです。 彼女は今も昔も、フードスタイリストっていうんでしょうか、 テレビの料理番組や雑誌で、料理を美しく盛り付ける仕事をしています。 要するに、テーブルセッティングのプロ。 エミちゃんが正月などにうちにきて、母やわたしが作った料理をパパッと皿に盛ると、 いつもの惣菜がいきなりご馳走に見えてしまう。 エミちゃんはそういう人で、そんな彼女が自分の結婚式の引き出物にしたのが、この皿でした。

「結婚式の引き出物の器っていまいち使いづらくて食器棚の肥やしになることが多いじゃない? でもわたしは皆に役立ててもらえるものがいいと思ってこの皿を選んだの」 とエミちゃんは自信ありげに言ったものです。 彼女によれば、この皿はKOSTA BODAというスウェーデンのメーカーのものだそうで、 北欧生まれでありながら、和食にも合うんだそうです。 和洋中華盛る料理を選ばず活躍するので、こういう皿が一枚あると非常に便利、 しかもデザインが洗練されているとのことでした。

わたしは「ほほ〜」とか「なるほど〜」とか相槌を打ちつつ、 母と一緒にエミちゃんのウンチクを有難く拝聴していたものです。 でも実は、この皿のどこがそんなにいいのか、さっぱり理解しちゃいませんでした。 ガラス器に盛るものといえばサラダくらいしか思いつかないけど、 さりとてサラダを盛るにしてはこの皿は平たすぎる。 デザインも、お洒落なエミちゃんがくれるんだからきっとオシャレなものに違いないんでしょうが、 わたしの目から見ると裏にはなんかガレっぽい模様が彫ってあって、いまいち面妖なような?? なので、エミちゃんの気遣いとは裏腹に、もらってから10年くらい、食器棚にしまいっぱなしになっていました。

刺身

ところがある日、夫のきりんが刺身をたくさん買って来たことがあって、 ふとこの皿に並べてみたのです。 そしたら、なんておいしそうなこと‥! 見るからに涼しげで、刺身の冷たさが引き立ちました。 そうか、この皿は刺身用だったのか‥!、そう合点しました。 まあ西洋のものだから、きっと向こうではカルパッチョかなんか盛るんでしょうけど。

果物

それから更に数年の後、この皿の用途がもう一つ広がりました。 娘の誕生日に、ふと果物を盛りあわせてみたのです。 これまた涼しげで、果物が引き立ちました。 そうか、この皿は冷たいものを盛るといい感じなんだな、と分かりました。 皿ごと冷蔵庫に入れて冷やしておくと、ますますいい感じ。 我が家ではそんな使い方が定着しました。

ジャージャー麺

更に最近、この皿で冷やし中華を食べるとおいしいんだ、ということを発見しました。 色を主張しない皿に、麺に添えたトマトの赤やキュウリの緑、卵の黄が映えること! 但し、皿は一枚しかないので、一人で食べるお昼専用。 家族のいない平日に、この皿で冷やし中華を食べるのが、わたしの密かな楽しみとなりました。 いつもは一人だと手抜きして具なんかろくに乗せないのに、 見栄えするのが嬉しくて、せっせとキュウリを刻んだり、卵を焼いたり。 でもそれも自分ひとりのためだけではなんだか虚しくなり、 同じ皿が家族の人数分揃っていればいいのにな、と思い始めました。

そこで、まだ同じ皿は売っているのかな、と思ってネットで探してみたんです。 そしたら、ありました しかもそんなに高くない! わたし的に、2枚で3500円って、大皿としてはけっこう許せる値段です。 決断が遅いわたしにしては珍しく、早速4枚買い足すことに決めました。

直径33センチの大皿に鍋の具を盛ったところ

更に嬉しかったのが、同じ店で、 同じシリーズ(ウラシリーズというらしい)の 直径33センチの大皿が見つかったこと。 ちょうど、直径25センチが全員分の刺身や果物を盛るスペースとしては手狭に感じられてきたところだったんですよね。 子どもの成長につれて量をたくさん食べるようになってきたらしく、 4人分の量はなんとか盛れるものの、ちょっと窮屈な感じ。 欲を言うならもう少し余白が欲しい。 そのほうが料理が映えるのにな、と思いはじめていたのです。 なのでこれも1枚買うことにしました。

エビフライ

で、結果的に、この買い物は大正解でした。 中途半端な数しかなかった食器が家族の人数分揃ったら 一気に使える場面が増えたことは今までにもありましたが、今回もまさにそう。 今年の夏はもう、この皿を使わなかった日はないくらいでした。 暑い日が続く中、涼しげな食卓が嬉しくて、毎日この皿にいろんなものを盛りました。

ビビンバ

考えてみたら、ガラス器だから何が盛れないってこともないんですよね。 陶器の皿に盛れるものなら、基本的に何でも盛れるわけです。 但し、あんまり熱いものをいきなり乗せたらガラスが割れてしまうからダメですが。 いつもなら瀬戸物の皿を使うところ、夏はすべてこの皿に代えました。 揚げ物、蒸し物、鍋の材料、その他な〜んでも、遠慮なく盛りました。 右の写真はビビンバですね。 実際はご飯ホカホカ、お肉ジュージューだったのですが、 いかにも涼しげに見えるでしょう?

海南チキンライス

で、夏が過ぎ、秋がきたら、活躍の場がなくなってしまったかというと、 そうではありませんでした。 夏より出番が減ったのは確かですが、秋は秋で意外な使い道に気づいたのです。

あのね、この皿は「化ける」んです。 透明だから、下に敷く色によって、何色にでも化ける。 下に赤い布を敷けば赤い皿、青を敷けば青い皿になるんです。 布さえあれば、この皿一枚で、赤い皿も青い皿も、黄色い皿も、すべて手に入るんです!

エスニック

うーん、なるほど〜〜。 この皿ってすごいんだ!

エミちゃんがこの皿を引き出物に選んだわけが、今になってわたしにもようやく分かりました。 「バカとハサミは使いよう」っていうけれど、道具が便利かどうかって、使う人にもよるんですね。 その道具の便利さを引き出せないと、どんなに良い道具でも結局宝の持ち腐れになってしまう。 ああ、「猫に小判」「豚に真珠」とはよく言ったものだわ。 20年かけてやっと、猫・豚状態から脱却できたわたしです。

初稿:2006年10月11日

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