理想のベッド。
夏になり、今年もまた渡り鳥がやってきました。
「渡り鳥」というのは、子どもたちのこと。 いつもは自分の部屋で寝る子どもたちが、夏の一時期だけ、枕を携えわたしたちの寝室にやってくるのです。 日本の夏は暑い。 なのに防犯上、窓は開けられない。 そこで夏は家族4人、エアコンの効いた涼しい寝室で仲良く一緒に寝るというわけです。
家族4人で川の字(一画多いけど)になると、わたしは無上の幸せを感じます。 昔「サンタクロース」という映画があって、 サンタクロース夫妻が木の洞に布団をきっちり敷き詰めて眠る場面がありました。 娘時代にその映画を見て以来、一つの空間に、家族みなで眠るのが夢だったのです。
現在の寝室は約8畳で、部屋のドアとクローゼットの扉が開くスペースだけ残し、 クイーンサイズのベッド一台とシングルサイズが二台ぴったり収まります。 つまり、うちの寝室は、ベッドの敷き詰められたオール万年床! でも、いつまでこうして4人一つの部屋で寝られるのでしょうか。
子どもたちが幼い頃は、家の中を用途別に分けて使っていました。 ここは食べる部屋、ここは眠る部屋、ここは遊ぶ部屋‥。 そして毎日みなで一緒に食卓を囲み、みなで一緒に遊び、みなで一緒に学び、みなで一緒に眠りました。
子どもの成長に伴い、家の中のエリアの分け方が人別に変わりました。 ここはパパの部屋、ここは長女の部屋、というように。 食事が終わると今ではみな、それぞれの部屋に引き上げます。 子どもたちは自分の部屋で勉強し、自分の部屋で遊び、自分の部屋で眠ります。
娘たちが幼い頃を思い出すと、わたしには今の状態がちょっと寂しい。 仕方がないこととわかっていても、ときどき何でもみんなで一緒にやったあの日々を取り戻したくなります。
子ども部屋にエアコンを入れないのは、娘たちを少しでも取り戻したい、 わたしのささやかな抵抗なのです。
初稿:2008年8月4日