いかだに乗ってホワイトヘブンビーチを後にしたのは、午後3時ごろ。
日本のわが家から12時間以上もかけてやってきて、滞在したのはたったの2時間だ。
いかだから船に戻る時、
クルーが砂にまみれた足にホースの水を掛けて砂を落としてくれた。
ここに来た時、
「最終のいかだに乗り遅れた人は、明日の昼の便で帰るように!」
と言ってたのは軽口だったらしい。
クルーたちは何度もお客の数を確認して、
連れてきた客が全員船に乗り込んだかどうかチェックしていた。
それから数十分後、全員揃ったのがようやく確認できると、 船はゆっくりと無人になった白砂のビーチを離れ、ハミルトン島へと帰っていった。
◆◆◆
ハミルトン島の波止場で船を降りた後、
うさぎたちはハーバーサイドの商店街をうろついて食べ物を探した。
惣菜屋の店先で
「フィッシュ&チップス(魚のフライとフライドポテト)はないか」
と尋ねると、気の良いお兄ちゃんが言った。
「『本日のおすすめ』と『バラマンディ』に『レッドエンペラー』。
魚は3種類あるけど、どれがいい?」
そう言われても、知らない名前ばかりで選べない。
それで3種類とも買ってしまったら、フライドポテトが山のようについてきた。
白い包装紙に包まれた揚げ物は、 ホテルの部屋まで持ち帰る間にすこししんなりしてしまったけれど、 食べなれた味でおいしかった。 『レッドエンペラー』なんて名前のは一体どんな魚かと思いきや、 これもクセのない白身魚であった。
山盛りのフライドポテトと格闘してうちに、だんだん部屋の中が暗くなってきた。
外を見やると、空はもう真っ暗。夜のとばりが降りていた。
時計を見たらまだ6時。
なんか妙だぞ、と、夏の日本からつい今朝飛んできた感覚が、違和感を訴える。
けれどここは南半球、今は冬。日が短くて当たり前。
やっぱりオーストラリアだなあ、と大きな窓から黒々とした海を眺めながら、
うさぎは思った。