朝の5時。まだ辺りが真っ暗。けれども、どこからともなく様々な鳥の声が。
オーッ、ケーッ、ピーヒョロ、ピーヒョロ、チャチャチャチャチャチャ‥。
6時ごろ、辺りが白みだすと、声の主が次第に判明した。
ギャーッ、ギャーッという騒がしいしわがれ声の主は、あの黄色いトサカの白いオウムだ。
ここにはカラスもいて、これは日本同様、カァー、カァーと鷹揚に鳴く。
トイレに行きしなに気づいたが、外廊下に面した洗面所の洗面台の天井近くが開いていた。 金網がはまっているので、トリの本体が飛び込んできたりはしないけれど、 ここから声が入ってくるらしい。
7時半頃、すっかり爽やかな朝になると、まだぞろオウムがベランダに遊びに来た。
うさぎの姿を見つけると、バルコニーの欄干にとまってじっと待っている。
――何を待っているかって?
もちろん、うさぎが何か食べ物をくれはしないかと待っているのだ。
だけどうさぎは何もやらない。
島のそここちらにも書いてある。ホテルの説明の際にもいわれた。
「鳥たちにエサをやらないで」と。
生態系に影響を及ぼすから、というのがその理由である。
また、「鳥が部屋に入ってくるから窓を開けっ放しにしないで」とも言われた。
網戸でもダメ。食い破って入ってくるから。
確かに、彼らは飄々としているけれど、
部屋に押し入るチャンスを虎視眈々と狙っているようにも見える。
朝になって皆が次々に起きてきたので、ホテルのダイニングに朝食を食べに行くことにした。 が、ここでもうさぎたちは鳥を意識しながら食事をすることとなった。
「屋外と屋内のどちらにしますか」と受付で尋ねられ、
「屋外」と答えると、明るいテラスに通されたが、
このテラス、芝生の庭に面する開口部の殆どを分厚いビニールで覆ってある。
せっかくのオープンエアのテラスにどうしてそんなものを掛けるのか。
それは、鳥がテーブルの上の食べ物を狙うからなのであった。
テーブルの上に置き去りにした食事が鳥についばまれないよう、
プラスチックのフードカバーまで用意されている。
実際、ドア二枚分ほどの開口部から、様々なトリが入れ代わりたちかわり、 料理を狙って入ってきた。 そして、椅子の背にとまっては白いフンを落としたりするから始末が悪い。
黒光りする見事な羽根のカラス
例の白いオウム(Sulpher-crested Cockatoo)
もっと小振りの極彩色のインコ(Rainbow Lorikeet)
こうした色とりどりの鳥たちは、確かにリゾート気分を盛り上げてくれる立役者ではある。 でも、甘い顔をしていたら、鳥たちに舐められてしまう。 彼らがテーブルの近くに来たら、確固たる態度で追い払わなくてはならないのであった。