動物園から帰ると、子供たちお待ちかねのプール遊び。 部屋に帰ると早速、みなで水着に着替えて庭に出た。
ところが、うさぎが皆より一足遅れて行くと、約束の場所に3人の姿はなかった。
他のプールへ行ったのだろうかと思ってビーチ沿いを歩いて行くと、
『ビーチクラブ』の前に出た。
『ビーチクラブ』というのは、このリゾート内で最もグレードの高い一角で、
オン・ザ・ビーチの低層フラットである。
そのビーチクラブの前の、これまたグレードの高い青々した芝生の上で、
うさぎはカンガルーに出会った。
体長1メートルくらい。長い尻尾、長い後ろ足。
ファウナパークで見たワラビーよりだいぶ大きい。
何かで読んだところによれば、カンガルー類は大きさによって呼び名が異なる。
大きいのをカンガルー、小さいのをワラビーと呼び、
冗談みたいな話だが、中くらいのは"ワラルー"と呼ぶらしい。
ワラビー・ワラルー・カンガルーと、三段活用なのだ。
ワラビーより大きいこれはワラルーあたりだろうか。
うさぎが恐る恐る近づくと、その、ワラルーだか何だかは、
つぶらな瞳でうさぎを見つめた。
ほんの1メートルくらいまで近寄ったけれど、逃げない。
うさぎを見つめたままだ。
うさぎは手を差し出そうかと思ったけれども、やめた。
引っ掻かれるかもしれないし、噛みつかれるかもしれない。
それで、神妙にワラルーの脇を通りすぎた。
そのあとしばらくして、子供たちを見つけ出して戻ると、 ワラルーはプールを挟んで反対側の芝生の上に移動していた。 ネネとチャアはおっかなびっくりワラルーを遠巻きにしている。 うさぎが二人をけしかけると、二人は走ってワラルーに近寄った。すると、
ビヨヨ〜〜ン
ワラルーは長い後ろ足で力強く芝生をジャンプしながら逃げていってしまった。 かなり素早い。 後ろ足を伸ばしたワラルーは随分と大きく、あのスプリングの効いた足で蹴られたら、 かすり傷ではすまないかもしれない。
その後も島内のあちこちで、同じくらいの大きさのカンガルーをしばしば見かけた。 最初はリゾートがカンガルーを放し飼いにしているのかと思ったのだけれど、 どうもそうではないらしい。 ホテル周辺のみならず、野山でも見かけることからして、どうやらこれらは"野良"のようだ。 野良猫・野良犬ならぬ、"野良カンガルー"である。
また、リゾート内の芝生という芝生には、 黒くて固い、5センチ程の長さのフンが落ちていた。 これもどうやらカンガルーのものらしい。 さすがにビーチクラブ前の芝生だけは例外で、 カンガルーはいたのにフンが一つも落ちていなかったけれど、 リーフビューホテル近くの芝生などはとても危険。 レンガの道に落ちているフンはこまめに掃除していたけれど、 芝生の中までは掃除をしないらしい。 そして長期滞在型のロッジの周辺ともなると落ちているフンの数もハンパではなく、 芝生の坂を転げ落ちてきたフンが、道の端に綿々とゾーンを形成している。要するに
カンガルーのフンの数はホテルの星の数と反比例する
のであった。