Canada  北米一のゲレンデ・ウィスラー

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【 バンクーバー空港 】

バンクーバー空港

空港ビル中央付近のゲートに横付けされたのだろうか。 飛行機から下りると、長い廊下を歩くでもなく、いきなり空港の心臓部に突入してしまった。 足の下には空港ロビーが広がっている。 ゲート付近の風景はどこの空港も変わらないとタカをくくり、時差ぼけのアタマでぼ〜っとしていたが、 こうしちゃいられない。早速ビデオとカメラを取り出し、カナダっぽいショットに向けて、行動開始である。

狭い通路の両脇は下の階から吹き抜けになっており、透明の腰壁で仕切られている。さながら「空中廊下」。 眼下には広いロビーが広がっており、朝のまぶしい光の中、ショッピング街と、 せわしなく動き回る人々の楽しげな様子が見える。 そこはうさぎたちのいる通路と完全に分離されて繋がってはおらず、手を伸ばせば届きそうな距離なのに、 まるで映像かなにかのように別空間。 まだカナダに入国していないうさぎたちは、楽しげな店々の様子だけ見せられて「お預け」状態だ。

空中廊下を抜けると、なにやら大きな円形にくり抜いた木のオブジェの前に出た。 そこからエスカレータで下った両脇に、 彫り込みのある大きな木の柱が「ようこそカナダへ」と歓迎の意を示すかのように立っており、 その先に入国ゲートが並んでいた。そして、その前には長蛇の列。 やれビデオだカメラだと立ち止まってばかりいたので、同じ飛行機で到着した人々に遅れを取ったらしい。

入国ゲートの上には"FOREIGN PASSENGERS"(外国人用)と書いてある電光掲示板があった。 「なんかチラチラして見づらいな」と思ったら、フランス語表記と英語表記を交互に表示していることに気がついた。 フランス語の綴りも英語と大して変わらないから、ただチラチラしているように見えたのだ。
そういえば飛行機の機内放送も、英語と日本語の他に必ずフランス語で入ったっけ。 映画の音声にもフランス語チャンネルがあり、機内誌も広告から何から何まで、 全て二カ国語で同じことが書かれていた。 そして機内のありとあらゆるところに正しい綴りと共に並んでいた、綴りを間違えたような表記、 あれも今にして思えばフランス語だったのだ。

大して変わらない英語とフランス語の表記を並べて表示することに意味があるのか。
確かにカナダにはフランス系の住民が多い。 東部のケベック州はフランス語圏なので、カナダの公用語は英語とフランス語なのだと、むかし地理でも習った。 でも、英語が全くできないカナダ人なんているのだろうか。 フランス語の表記は英語にそっくりだし、英語表記だけでも困らないのではないか。 フランス語で書くくらいなら漢字でも書けよな、バンクーバーにはチャイナタウンだってあるだろうが ――くらいに最初、うさぎは思った。

けれど、チカチカする電光掲示板を見ているうちに、そうか、公用語が二つあるとはそういうことか、と気付いた。 これは実用面での問題ではない。スタンスの問題なのだ、と。 日本国内で日本語の通じない役所などあり得ないように、カナダ国内の公的な場所で、 フランス語で用が足りないことがあってはならない――公用語であるということは、そういうことなのだ。

随分並んで入国審査を終えると、そこは広い広い手荷物受取所であった。 物々しいベルトコンベヤーが5台ほども並んでいて、荷物がグルグル回っている。 成田のと違い、荷物の乗るステンレス製のキャタピラ部分が斜めになっており、 新たに出てくる荷物は上の方からこのキャタピラの斜面を滑り落ちてくるという、荒っぽい仕組みである。 ごろんごろんともんどりを打って転げ落ちてくる荷物があるかと思えば、 ガツーンと下の壁にぶつかって鈍い音を立てる荷物もある。
わが家のボストンバッグもしかり。 上から転げ落ち、ずざざざーとステンレスの上でスライディングした二つのバッグに、うさぎは心の中で謝った。

ごめんね、ごめんね、うー、可哀相に。痛かった〜?

これだから、荷物を預けるのはいやなのだ。

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