Canada  北米一のゲレンデ・ウィスラー

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【 メイプルシロップ 】

メープルシロップ

今日はアフター・スキーにもやることがあった。

雪でメイプルシロップのキャンディーを作ること!

それは、うさぎがネネぐらいの歳の頃から、いつかやってみたいと思っていたことだった。 愛読書ローラ・インガルス・ワイルダーの『大きな森の小さな家』にそれは出てくる。
冬の終わりに森のカエデの木から樹液が沢山とれた年があり、 その樹液を煮詰めたメイプルシロップを雪にタラタラと垂らして固め、柔らかいアメにして食べる話。 幼いローラとメアリーが庭の雪をフライパンいっぱいに取ってきて、メイプルシロップを垂らすシーンは、 ガース・ウィリアムズの挿絵と共に、うさぎの心にくっきり焼きついて離れない憧れであった。

この憧れを実戦するに、このウィスラーの地ほど相応しい場所があるだろうか? ローラが育った同じ北米大陸の、雪深く美しい村。 同じシリーズの『大草原の小さな町』に出てくる町の規模と雰囲気が長年よく分からなかったうさぎだが、 さっきホテルまで歩いて帰って来た時に突然分かった。ああ、こういう町であったのか、と。 こじんまりした町ではあるものの、 視界の効かない吹雪の時には家にたどり着けずに遭難してしまうかもしれない規模の町――、 それはこういう街であったのだ。 日本の街よりも道幅が広く、それゆえ街路の占める割合が大きい街。 しかも街の外には何もなく、うっかり街を出てしまったら、あとは荒野がとめどもなく広がるばかりの街なのだ。

今日はホテルの庭にも雪が積もっている。 地面の雪はどこも踏み荒らされているが、植え込みの周りに設えられた四角い石の上に積もった雪は、 誰にも触れられておらず、きれいなままだ。 うさぎたちは、スーパーで購入したメイプルシロップの小瓶を持って庭へ出た。 そして、石の上の雪にシロップを垂らしてみた。

だが。雪の上にたらしたシロップは固まらなかった。 雪に冷やされて、瞬時にアメ状に固まるはずのシロップは、液体のまま雪にしみ込んでしまったのである。 細く垂らしてみたり、太くしてみたり、ゆっくり垂らしてみたりと、いろいろやってみたが、全然ダメ。 雪の深さが足りないのか、それとも雪の密度が低すぎるのかもしれないと、 ローラがやったみたいにフライパンに雪を詰め、その上に垂らしてもみたが、結果は同じ。 気温が高すぎるのかもと、雪ごと冷凍庫に入れても見たが、メイプルシロップシャーベットができただけだった。 あと考えられることといえば、シロップの濃度が低すぎたということ。 もしくは店売りのシロップなんかじゃ新鮮さが足りないとか?

せっかくの試みが失敗に終わり、うさぎはすっかりがっかりしてしまったが、子供たちは実に楽しそうだった。 雪の詰まったフライパンを携えて部屋に帰ってきてからも、足つきグラスに雪とメイプルシロップを入れて溶かし、 琥珀色の液体を作って「大人のワイン (ブランデーのこと??) 」だと言って気取って飲んでみたり嘗めてみたりして、 小一時間、台所で遊んでいた。

小さなボトルに入ったメイプルシロップは瞬く間に消費されてなくなった。

甘いシロップを子供にこんなに摂取させて大丈夫かって?
実はローラの本に「メイプルシロップはいくら食べても体に悪くない」とある。
ローラがそう言うんだから大丈夫! うさぎは子供たちに好きなだけメイプルジュースを飲ませてやった。

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