一日半のトレーニングですっかり自信を身につけたチャアを連れ、皆で山頂からのコースに再チャレンジ!!
――と思ったら、思わぬ伏兵がいた。ネネである。
「もう滑りたくない。足が痛い」と来たもんだ。
仕方がないので、チャアときりんには先に行ってもらい、うさぎは根気よくネネを説得することにした。
「そりゃ、ママだって足が痛いわよ。痛いけど、カナダまで来て滑らないで帰ってどうするよ?!」
「ママなんて、すごくゴンドラに酔うんだよ。それでも頑張って山頂まで行こうっていうんだから、
アンタも頑張んなさいよね」等々。
熱心な説得が功を奏し、ようやくネネが重い腰を上げたので、ネネとうさぎはゴンドラの駅へ向かった。 その途中で、きりんとチャアの乗ったゴンドラのコッドが頭の上を通りすぎようとしたので、上に向かって叫んだ。
「あたしたちも行くから、山頂駅で待っていて!!」
と。
ネネと二人でゴンドラに乗って山頂駅に着くと、どうやらさっきの叫びがちゃんと届いていたらしい、 きりんとチャアが待っていた。皆は装備を整え、おとといと同じ道を滑りはじめた。 ゴンドラから降りてすぐ滑りはじめたので、うさぎは気分が悪い。 風をきって滑っているうちに、すぐ直るかな〜?と思っていたが、滑るうちに、気分はむしろ悪くなっていった。 どうやら、うさぎは酔うのだ。スキーのスピードに。自分の滑るスピードに、うさぎの体はついていけないらしい。
だいたい今日のペースは速い。
チャアが先頭を切り、直滑降でどんどん先へ先へと滑っていってしまう。
きりんとネネがそれを追う。
うさぎはしんがりで、アタフタと皆を追う。
早く皆に追いつかなきゃ、と焦るあまりスピードを出しすぎ、コントロールしきれずに傍らの山の斜面に激突して、
雪からスキーが抜けなくなってしまうこともしばしば。それでも皆はうさぎを待っててなどくれない。
後ろを振り返りもしないから、うさぎが雪に埋もれている姿をご存知ですらない。
こっちは、きりんが子供たちのビデオを撮っている間にやっと追いつく、という有り様である。
一体何だって、こんなに子供の上達って速いんだろう?
「こわいー!! もう滑れないー!!」といって雪にしゃがみこみ、泣いていたのは、ついおとといのことなのに。
尤も、うさぎも昨日今日もっと真面目にトレーニングパークで練習していたら、 もうちょっと上達していたのかも‥。
ローワー・ウィスキー・ジャックに入った頃から、あたり一面に霧が立ち込めてきた。
10メートル先はもう、霞んでいてよく見えない。
ザシュッという音が背後でしたな、と思うと、人が霧の中から現れる。そしてまた、霧の中へと消えてゆく。
すっかり自信をつけたチャアは、自分も猛スピードで滑っていこうとするが、きりんが押し止めた。
こんな霧では、先の状態が分からない。もっと用心して滑らなければ。
霧の向こうには、どんな崖が待っているか、分からないんだよ――。