ボディーボードに覗き穴がついたものを、ここではスパイボートと呼んでいる。 そのボードに腹這いになり、海に漕ぎだすと、手軽に海の中を観察できる。いわば個人用グラスボトムボートである。
これは便利! シュノーケリングよりずっと簡単!と思い、
サウスビーチのボート・ブレまではるばる借りに行った。
だが。重たい思いをしてやっとノースビーチまで持って帰ってきたスパイボートは、うさぎの役には立たなかった。
なぜって、板の上に腹這いになって沖の方へと漕ぎだすと、
いくらもいかないうちに、すっかり酔ってしまったからだ。
スパイボートの上のユラユラ感は、船酔いを起こすのだった。
すっかり酔ってしまった沖でスパイボートから身を起こし、海の中に立ってみると、
まだ水の深さは膝までもなかった。うさぎはスパイボートを曳いてビーチまで歩いて帰った。
歩いている途中、海の中に部屋のキーが落ちているのを見つけた。
拾って帰り、あとで日本人スタッフに届けたら、これは日本人客が今日なくしたものだということだった。
いくらビーチに近いとはいえ、この広い海で、よくこんな小さな落とし物を、落とした当日に見つけたものだ。
結局スパイボートはうさぎには無用の長物だったけれど、ネネときりんが代わりに活用してくれたし、 うさぎもスパイボートで沖まで行ったからキーを見つけられた。 きのう海で一つタライをなくしてしまって以来、リゾートに対してちょっと心苦しかったしかったのだけれど、 キーを見つけて届けたら、とたんに気が軽くなった。 重たい思いをしてサウスビーチからスパイボートを運んできたのは、無駄じゃなかったかな。