空港でホテルのマイクロバスに乗り、レオパレスへ。それは約20分の道程だった。 真夜中とあって瞼が重いが、せっかく外国にやってきたのだ。 こんなところで眠ってはいられないと、外を流れていく風景を必死に目で追う。
空港付近の殺風景な幹線道路からダウンタウンへ。この辺はグアムの政治経済の中心であるアガニャ地区だ。 道路際のそこかしこにクリスマスのイルミネーションがまたたいている。
アガニャ地区を抜け山道に入ると、じきに「レオパレスリゾート」の表示が見えた。 どうやらレオパレスの敷地内に入ったようだ。だが、そろそろ到着かと思いきや、それからまた10分近くも車は走りつづけた。 狭い山道は舗装こそされているが街灯もなく、センターラインを示すオレンジ色のドットだけを頼りに車は走る。 曲がりくねった暗い道を運転手はものともせず、スピードを緩めず走りつづけた。
一本道がどこまでも続き、本当にこの道の先にリゾートなんかあるのだろうかと思い始めた頃、門番付きのゲートをくぐり、 そのずっと向こうに瀟洒なマンションが闇に浮かぶように群立しているのが見えた。 ゲートを越えて左手には黒光りする水を湛えた湖と、そこに張り出すパティオ。 パティオは丸く、電飾コードに縁取られている。そのイルミネーションが黒い水面に映り、幻想的な光景だ。
湖を迂回しながら車はなおも曲がりくねった夜道を走った。ゲートの中のここは暗くない。 道の両脇に植えられた木の根元のライトアップが、いざなってくれる。
湖の向こうに見えたパティオのそばで、ようやく車は止まった。ここは「クラブハウス」。 ゴルフ場なのでそう呼ぶのだが、要するにここが「レオパレスリゾート」のフロント棟であった。
エアコンでギンギンに冷えた車から降りると、またムアッとした南国の空気につつまれた。
その南国の空気の中、クラブハウスの正面玄関には赤いコートを着込んだ等身大のサンタクロースが立っていた。
左右には色とりどりに輝くクリスマスツリー。ここは夏なのに、冬だ。
クラブハウスの中に入ると、そこには高い天井と広い空間を持った贅沢なロビーが広がっていた。 南国らしい陽気さと、リゾートらしいおおらかな雰囲気の中にも、風格を感じさせる。 チャアにつきそってトイレへ赴くと、ゆったりとした空間のそこかしこに真鍮の縁取りがきらめいていた。 一歩間違えば成金趣味と言われそうな、分かりやすいゴージャスさ。 眠くて半分しかあいていない目に、その輝きが滲んで映った。
クラブハウスで待ち受けていたのは、初老の日本人マネージャーであった。
映画によく出てくる執事みたいな、折り目正しい感じの人。名前を「カブキさん」とおっしゃる。
カブキさんはプレゼントやパンフレットの山を用意して待っていた。
一人に一つオレンジ色のハデなビーチバッグ、子供たちにレオパレスのマークの刺しゅう入りキャップ、
それに色とりどりの色画用紙に印刷された各種無料券の束。彼はそれをきりんに手渡すと、ホテルの説明を始めた。
あとでそのパンフレットの山を読みますから、そんなに丁寧に説明して下さらなくても結構です‥
と言いたいところだったけれど。とにかく眠いのだ。早く部屋で眠りたい。もう夜中の2時過ぎ (日本では1時) だもの。
でも、こんな素敵なおじいちゃまにそんなことは言えない。
説明がようやく終わり、部屋へ行く為に外へ出ると、カブキさんは夜空を見上げた。
「流れ星が見えないかな‥? ちょうど今、双子座流星群が来ているんですよ」とカブキさん。
「流星群‥? 流星群てたしか先月あたり話題になってたあれですか?」とうさぎ。
「ああ、あれは獅子座流星群ね。あれとは別の流星群が、双子座の方角から今、来ているんですよ。
明日がピークですからね、夜空を見上げてごらんなさい。流れ星が見えますよ」
その後、車で部屋へ。部屋は、さっき車中から見えた「ラクエスタ」という名のマンション群の中にある。 少しゲートの方へと戻る感じだ。 ゲートへの道から分かれてラクエスタに入る道は、色とりどりのイルミネーションで楽しげに飾られていた。 トナカイがサンタクロースの乗った橇を牽いているものもあれば、椰子の木や花など、南の島っぽいデザインもある。 道の両端にずらりと並んだ光の絵は、ダイナミックな大きさといい、大胆なデザインといい、 南国的なおおらかさがあって楽しかった。