島内観光のバスは10時40分に来た。
チャモロ人の若いガイドさんがうさぎたちを歓迎してくれた。名前をジョセフさんとおっしゃる。
それにもっと若いビデオ係もいた。
うさぎたちがバスに乗り込もうとすると、ビデオ係のお兄さんは、一人一人の顔を丁寧に撮った。
あとでそのビデオを参加者に販売するのだ。値段は50ドルとか、そんなものだったと思う。馬鹿馬鹿しいような値段だ。
もちろんうさぎは買わなかったが、「あんたね、いくらなんでも高すぎるわよ」とビデオ係に説教をたれながら、
それでも買っていたおばさんがいた。
説教されようが何されようが、こうして売れるものなら、そりゃ売るだろう。
うさぎたちがウェスティンホテルから乗り込むと、バスは、隣りのリーフホテル、そのまた隣りのハイアットで客を乗せた。 ウェスティン隣りのリーフホテルはピンクの外壁がとても素敵で、それをちょうど塗りなおしている最中だった。 そのお隣と比べると、グアムきっての人気リゾート・ハイアットの外壁には痛みが目立った。 まだ建って5、6年のはずなのに。たぶん海の側だから痛みが激しいのだろう。 でも5年で外壁がボロボロになるなんて、修繕が大変だ。
ハイアットでピックアップを終えると、
バスは、ホテルが数珠のように連なったホテルロードからシャーウッドホテル付近で左折し、
マリンドライブをニッコー方面へと引き返した。
シャーウッドホテルは、半年前にオープンしたばかりの一番若いホテルだ。
どこかのサイトで中華系資本のホテルだと読んだ覚えがある。その脇を抜ける時、ガイドのジョセフさんは言った。
「ここが一番新しいシャーウッドホテルですね。出来上がる前は、ホリディ・インになるはずでした。
ウェスティンホテルも、レオパレスの建て替えだったはずが、ウェスティンになりましたね」
――ここがグアムの不思議なところ。今の相鉄トロピカーナホテルも、10年以上前は第一ホテルだった。
今、第一ホテルは別にある。
マリンドライブを走っている最中にも、ジョセフさんは日本語でしゃべり続けた。
びっくりするほど高額の授業料の名門校の話、車で学校に通う高校生の話、数年前グアムを襲った台風と停電の話‥。
窓の外に見えるものに関連してしゃべる。日本語が上手だ。
「本当なら、これから恋人岬へ向かうところですが、今は修復中で入れません。
恋人岬は、昔、チャモロの恋人たちが身を投げたといわれているところです‥」これは恋人岬にまつわる悲恋の話。
ジョセフさんは、かなり長いこの話を一生懸命話してくれた。
上手な日本語だけれど、それにしたってどことなく不釣り合いな難しい言い回しが出てきたりする。
おそらく、恋人岬に関する文章を丸暗記したのだろう。長い話なのに、大した努力だ。
必死で覚えたこの話を、ジョセフさんは毎日毎日、延々と観光客に話して聞かせているのだろうな。
恋人岬の代わりに到着したのは、オーバールック(Overlook)だった。 ここは、読んで字の如く、タモン湾のホテル街を上から見下ろす丘だ。風が強い。 観光客を当て込んで、丘の上にはちょっとしたお茶屋さんもあった。ちょっと飲み物が欲しくなる状況だものね。
ここで集合写真を一枚パチリ。これも15ドルで販売するのだ。 それを買う気のないうさぎたちは、ツルのように羽を広げた優雅なニッコーホテルをバックに写真の取り合いっこをした。 するとジョセフさんがやってきて、4人一緒に撮ってくれた。 どうもどうも、すみません、集合写真が売りにくくなるのにねえ。ありがとうございます。