Guam  丘の上のリゾート・レオパレス

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【 ケーキ!ケーキ!ケーキ! 】

さて、4時をまわり、そろそろ寒くなってきた。うさぎはトイレでネネとチャアを服に着替えさせ、帰ることにした。 きりんはまたふらふらとトイレへ消えた。
トイレから出てきたきりんは、ますます絶不調で、遂には貧血を起こして座り込んでしまった。 それでも何とか歩いてもらい、ロビーへたどりついたが、人目のつかない廊下のソファに長々と横たわり、寝てしまった。 やれやれ‥。仕方がないので、うさぎはしばらく、みやげ物屋を物色してヒマを潰した。

ロビーの隅にある売店で、素敵な缶入りクッキーを見つけ、物欲しそうに眺めていると、 店番のお姉さんが声をかけてきた。
「これが欲しいんだけれど、カードが使えるかしら。わたし今、ビンボー(poor)なのよ」。 現金の持ち合わせがない、という英語が思い浮かばなくて、うさぎがそう言うと、お姉さんは笑った。
「もちろんよ。カードを持ってる人を、誰も貧乏とは言わないわ」

そうこうするうち、ネネがラウンジにあるケーキに目をつけた。 ラウンジの入口には、チョコレートケーキでできたお家が飾ってあり、 その左右にも色とりどりのケーキが何段にも積んである。それはそれはおいしそうだ。 うさぎはラウンジに入り、子どもたちにケーキ、自分に生ジュースを頼んだ。
子どもたちのケーキに付いてきた飲み物は、なんとコーラ。 ケーキにコーラ? しかも高級ホテルのラウンジで? やっぱりアメリカだなあ、と妙に感心してしまった。

二人は、楽しそうにケーキを選びに行き、一番美味しそうなチョコレートケーキを選ぶと、大事そうに、 だがぺろりと平らげた。そして、

「もっと食べたいーー!!」

〔まさかねえ、700円もするケーキセットをいくつも頼めないわよ〕とうさぎは内心思ったが、 ケーキの小ささに思い当たるところがあり、ボーイさんに尋ねた。「ケーキのお代わりを頂いてもいいですか?」 と。
すると、「もちろんですとも」。何のことはない、ここはケーキビュッフェだったのだ。 それを子供たちに伝えると、二人は大喜び! 次は何を食べようかと、大ハッスルだ。
「じゃあ、今度はコレ!」とネネがオレンジケーキ、チャアがベリーの載ったのを取ってきたので、
「どれ、ママにも一口づつちょうだい。そんなにおいしいの?」とうさぎも味見をしてみると、確かに。 子ども騙しでない甘さが心地よく、さほど甘いもの好きではないうさぎも、ケーキを頼めばよかった、 と思った。丁寧に作ってあるのが良く分かる味だ。

食べている途中で、きりんも亡霊のようにフラフラと近寄ってきた。 けれど、「パパも食べる?」と尋ねると、力なく横に首を振り、そのまままたフラフラとソファに戻って行った。 甘いものが大好きなきりんがケーキを食べられないとは。なんとも哀れ‥。

ネネもチャアも、ケーキを4つ、5つ平らげただろうか。 二人がすっかり満足したようなので、うさぎはカードでの勘定を頼み、ボーイさんが請求書を持ってきた。 うさぎはその「チップ」の欄に$3.00とかきこんだ。ケーキに満足したので、請求額の15%を切り上げたのだ。 けれど、後でよく明細を見て気がついた。請求額にはサービスチャージが含まれていたことに。 なーんだ、ここではチップは必要なかったのだ。うさぎは途端に、すごーくソンをした気分になった。

「ケーキがおいしかったからいいや、ケーキがおいしかったからいいや、ケーキが‥」と何度もアタマの中で唱えて、 うさぎはこの「損して悔しい」気分を追い払おうとした。 でもうまくいかない。仕方がないから、「この3ドルは、次からチップの二重払いをしないための授業料だ」と考えて、 なんとか諦めた。
気持ちの分だけチップを払うという西洋の習慣は、そういう概念のない国でこれまで生きてきたうさぎには馴染まないらしい。 うさぎは、満足しても、ことほど左様にチップを惜しむ。「それ(満足)とこれ(チップ)とは話が別」なのだ。

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