グアム時間で夜中の1時、日本時間で12時過ぎに、グアムに到着。
ままりんもうさぎも荷物を預けるのは嫌いなので、それぞれ3日分の荷物をエンシャコラ、エンシャコラと、
機内から自分で運び出した。
「荷物を持とうか」と言ってみるうさぎ。けれど、
「いいの。自分で持つから」とままりん。
入国審査で並びたくないがため、飛行機を下りると、うさぎはせかせかと歩いた。 その後を、ままりんが小走りで追う。その時、入国審査の整列係が向こうの方からこう叫んだ。
「グランマ(おばあちゃん)! プチグランマ!」
その言葉にうさぎはハッとして、ままりんを振り返った。
うさぎから見ると、ままりんは元気で若々しい。 ままりん自身、老齢年金を受け取ってはいても、自分のことを老人だなどとまだ考えたくないに違いない。 重い荷物だって自分で持ちたいし、電車に乗るときの椅子取りゲームには積極的に参加しても、 シルバーシートを譲られたら内心ちょっと傷ついてしまう、微妙なお年頃である。 第一、高齢化社会が既に始まっている日本では、70に満たない人までいちいち老人扱いしたりしない。 日本国内にいる限り、ままりんはまだ「老人」ではないのだ。
けれど、大概の国では、還暦を過ぎた人というのは「老人」以外の何者でもない。
多くの国の平均寿命はままりんの年齢よりも若い。
しかも、戦時中の食料難の時代に東京で育ったままりんは小柄だ。
でっぷり太ったチャモロのオバアチャンたちと比べても、華奢ではかなげで、庇ってあげたくなるに違いない。
そんなままりんに重い荷物を持たせっ放しのうさぎがこの国の人の目にどう映るか――
それは火を見るよりも明らかというものだ。
うさぎはなんだか急に居心地が悪くなり、ままりんにもう一度言った。
「ねえ頼むから、荷物を持たせてよ」と。でもままりんの返答はやっぱり同じだった
「いいったら。自分で持つから」と。