Guam  親孝行の旅

<<<   >>>

【 夜中のベルU 】

アメニティ

明日はいよいよ帰国。
10時ごろ、お風呂に入ったり荷造りをしたりしていると、電話が鳴った。

こんな時間に一体何かと思ったら、ルームサービスからだった。
「今日は部屋に入りませんでしたが、タオル類は足りてますか。もし足りなければ、今からお持ちしますが」 という電話だった。
ままりんもうさぎも人に部屋に入られるのが好きではないので、 今日はドアに"Don't disturb" (起こさないで)の札を掛けっ放しにしておいた。 それでわざわざ電話をくれたのだ。
「足りてるから大丈夫です」とままりんが言い、電話を切った。

電話を切って、しばらくした後で、ままりんが言った。
「ねーえ、昨日も夜に電話が掛かってきたじゃない? あれって――」
「電話? 電話なんて掛かってきたっけ」とうさぎ。けれど、言いながら、ハタと気が付いた。

そうか、ベルだ。目覚ましのベル!
昨夜のあれは、目覚ましなんかじゃなく、電話だったんだー!

きっと、昨夜もルームサービスが電話を掛けてきたのだろう。昨日も札をドアに掛けて出かけたから。 寝ぼけていたので目覚ましだと思ったのだ。

うさぎは無性に可笑しくなった。 今の今まで電話のベルを目覚ましだと思い込んでいたのもマヌケな話だが、 それより、ままりんが電話を切ってしまったことが可笑しかった。 うさぎも寝ぼけてたけれど、ままりんも寝ぼけていた。 電話のベルだと気づきながら、ベルの音を消すことしか考えてなかったんだものね。

「しかし、ウェルカムフルーツといい、夜中の電話といい、夜も昼もないホテルねえ」とままりん。
「まったくねえ。きっと今日の仕事は明日に持ち越さないのが、このホテルの信条なのね。 たとえ深夜になろうとも」とうさぎ。それを聞いたらままりんが吹きだした。 確かに、この行き過ぎの生真面目は、いかにも日系のホテルっぽくて、笑える。 二人はしばらく笑い転げたのであった。

<<<   ――   3-10   ――   >>>
TOP    HOME