Hongkong  香港

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【 プロローグ 】

「うさぎちゃん、春休みのご予定は?」と、 大学時代の友人である菜々子ちゃんから電話がかかってきたのは、 3月のはじめのことだった。 「もし予定が空いているのなら、一緒に香港に行かない?」
なんでも、期間限定、売り切れゴメンの破格値ツアーがあるのだという。

「ふうん、それでその破格値っていうのはいくらなの?」 と大して期待せずにうさぎは尋ねた。 そう簡単に「破格値」という言葉に躍らされるうさぎ様ではない。 実はうさぎには、"破格値ツアー情報"を教えてくれる知り合いがけっこういる。 そして、その人の言う「破格値」が、 うさぎの感覚で言うとそれほどの破格値ではないことも多い。

ところが。
「2万4800円なの」と菜々子ちゃん。
「そう、安いわね」 それでもうさぎは動じずに言った。「3日間?」
「いいえ、4日間みたいよ」
ここでうさぎはちょっと身を乗り出した。「4日間?」

「それでね、3月の27日から行こうと思うの」
受話器を片手にうさぎはカレンダーをめくった。 あらら、春休み中じゃないの。しかも出発が土曜日。 それで2万4800円? それはちょっと無理ね。 きっと2万4800円というのは最低価格で、その出発日に関してはもっと高いのでしょう。

ところがところが。 よく聞いてみると、出発日によらず、2万4800円一律なのだという。 これには、激安ツアー評論家のうさぎもさすがに驚いた。 うさぎ以上の激安ツアー評論家である夫のきりんも、 「まあ、春休みでなければそこそこ出る価格ではあるな。 でも、春休み中となると、確かに安いな」と言った。
「じゃあ行ってもいいかしら?」
「まあ、いいんじゃない。行っておいで」

こうして、うさぎの香港行きはすんなり、一瞬で決まった。 実は同じ3月、この香港旅行に先立ち、 きりんと次女のチャアにはランカウイに行く計画があり、 うさぎは長女のネネと留守番、そんないきさつが背景にあった。

菜々子ちゃんが、娘のくるみちゃんを連れてくるというので、 うさぎも娘を一人連れて行くことにした。 最初に誘ったのは、同じくランカウイに行かないネネ。 ところが、彼女は行きたくないというので、次にチャアを誘った。 くるみちゃんが同い年であることも手伝って、チャアは大喜び! それで話は決まった。

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