Indonesia  バリ島芸術の村ウブド

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【 エピローグ 】

バリについて最初の印象は、その文化の濃さであった。 とにかく、どっちを向いてもバリ〜〜!!、という状態にまず驚いた。

今まで、海外でそんな状態に置かれたことはなかった。 「その国らしさ」というのは、どことなしに感じられたり、要所要所にはあったとしても、 世界中を席巻する均一な西洋文化、近代文化の中に見え隠れする程度で、 わざわざ探して見つけない限り、 そうゴロゴロとその辺に転がっているものではなかった。

ところがバリのウブドでは、右を向いても左を向いてもバリ、 どっちを向いてもバリで、バリらしさを探す必要なんて全然なかった。 チャナンの見つからない通りはない。石像を置いていない家はない。 西洋文化に一歩も譲らない確たるスタイルが、 どっちを向いてもどっしりと根付いていた。

こんなにも違う文化が今なお矛盾なく機能しているなんて‥!

なんだかんだいっても結局、 近代的な西洋文化に勝てる文化はないと、これまで思い込んでいたらしい。 そんな勝手な思い込みを、 バリは「へえ、そんなもんですかね」とでも言うように、 平気な顔して鮮やかに覆してみせてくれた。

しかもその文化は、実に馴染みやすく懐かしく、ゆったりと落ち着ける文化だった。 くっきりと鮮烈なカルチャーショックではなく、 穏やかに、ゆっくりと、けれども心の奥深くまでじわじわとしみこんで 自分の何かが少しずつ変わっていくような、そんな感じがあった。 尤もそれを「バリの文化」と呼んでいいのかどうかは分からない。 もしかしたら「アラムジワの文化」と呼ぶべきものだったのかもしれないけれど。

とにかくうさぎは、バリで絵を描いたことによって、 自分の中の何かがはっきりと変わったと自覚している。 大事なことが一つ、はっきりと分かったのだ。

いま目の前にあることを一生懸命やることが、結局は一番豊かなことなのだ。

と。

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