朝、最初に目が醒めたのが5時頃。隣の部屋でネネと寝ていたチャアが、お腹の上に乗っかってきた。 それでもしつこく眠っていると、チャアはきりんのベッドに上がり込み、すっかりきりん、 そしてネネをも起こしてしまったらしい。だが、うさぎはそのまま眠りつづけた。
次に覚えているのが8時前。
「ママー、ちょっとその辺を散歩してくるねー」というきりんの呼びかけを聞いた。
「‥ん、わかった」と反射的に返事をすると、賑やかな声がドアの外に消え、うさぎはまた眠った。
そして三度目は9時頃。3人が外から帰ってきた。そして、買ってきたコーンフレークをバリバリ食べおわると、
「ママーッ、プールへ行くよー!!」‥やれやれ、とうとう起きなくちゃ。
今日のうさぎは元気がない。体調が悪いのだ。体が重くて重くて、もう床にめり込みそう‥。
それでもうさぎは日本から持ってきたカロリーメイトでお腹を黙らせ、プールへついていくことにした。
部屋で寝ているのはあまりに不毛だ。
うさぎたちの部屋は広い芝生の広場の前で、芝生と部屋との間に更に竹の植え込みがある。
竹に囲まれた日陰の小さなバルコニーは静けさに包まれ、落ちついた雰囲気だ。
それはそれで素敵だけれど、あんまり南国リゾートっぽくないのが玉にキズ。
ペナンに来たからは、気分だけでもリゾートしなくっちゃね。
きりんがもう少しその辺を散策してくるというので、一足先に女3人でプールへ向かった。
部屋を出ると、向かい側の部屋のドアが開いていた。ルームメイドが入っているのだ。
その部屋からまぶしい光が廊下に差し込んできた。ザッツ・リゾート!!という感じの陽気な光だった。
うさぎたちの部屋には射し込んでこないような。こんな陽気な光の中では、何もかもが踊りだしそう。
こんなふうに南国の空気をたっぷり吸い込んだ部屋の中でだったら、一日中ベッドで寝ていてもリゾートできそうだ。
うさぎは、プール側の部屋の陽気なリゾートらしさがちょっと羨ましくなった。
水着のままロビーを横切ろうとすると、ネネが言った。
「ロビーを通らないとプールには行かれないのかなあ。水着でロビーを歩くのって、なんか恥ずかしい」
「おやまあ、アンタって誰が育てたんだか、レディねえ。
でも、リゾートホテルって水着でウロウロするのが当たり前なんじゃないのー?」とうさぎ。
「グアムのウェスティンリゾートが『ロビーを通らなくても客室からプールエリアに出られる』
という点で画期的だっていうんだから、普通はロビーを水着でフラフラしててもいいんだよ、きっと」
「そおかなあ???」とネネ。
「そうよー」とうさぎ。
けれどそう言いつつも、あとで捜してみたら、部屋の脇のドアから狭い階段を下りると、
植え込みの中を通ってプールエリアに出られることが判明した。
そして、ひとたびそういうルートを発見してしまったら、あの重厚且つ上品なロビーを水着で横切るなんて、
よくもそんな真似ができたものだと、遅ればせながら恥らったうさぎであった‥。