Malaysia  ペナン島

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【 魔女のレストラン・マジック1 】

デザート

レストランが並ぶ側へと道を渡り、最初にあったレストランの前をぶらぶらしていると、 焦げ茶色の顔をした客引きのおじさんが声をかけてきた。

「一人に一つ、アイスをサービス! マジックショー、サービス!」

と、カタコトの日本語で。
料理の写真がたくさん並んだ看板を見ると、どうやらここはシーフード中心の店のようだ。 名前を、"Magic 1" (マジック・ワン) という。 "The wizard of food" (料理の魔術師) とか"Witch's restaurant" (魔女のレストラン) などのサブタイトルがちょっと興味をそそられる。
オープンエアの店構えが新鮮で、店内は西洋人客でほぼ満席。 メニューに載っている料理の価格は、日本のファミレスと大して変わらないから、マレーシアにしては高い気もするけれど、 なんといってもこのメジャーさが安心だ。うさぎたちはここで食事をすることに決めた。

時刻は9時過ぎ。日本時間で言えばもう10時過ぎだ。ネネもチャアも、目がとろんとしている。 席につくのと同時に、カリカリのガーリックトーストをもってきてくれたのは有り難かった。 それを子供たちに食べさせて、なんとか間を持たせ、日本語が添えられた英語のメニューで急いで注文を済ませると、 しばらくして料理が運ばれてきた。

まずはうさぎの「ワンタンスープ」。 具は人参とワンタンのみだけれど、熱いスープがすごくおいしくて、一口飲んだだけで極楽気分になってしまった。
チャアの「シーフードサラダ」は意外にもメインディッシュ様の立派な一品で、カニ肉のマヨネーズ和え、 エビのアメリケーヌソース和え、それにサーモンマリネがパイナップルの千切りの上に乗っていた。
ネネの「カニグラタン」は、カニの密度がものすごく、くどいほどに海の香りがした。
きりんの「ロブスターとカシューナッツのタルタルソース和え」も、ぴりりと辛くてとてもおいしかった。

それぞれの皿には、ブロッコリやカリフラワー、人参、ヤングコーン、フライドポテトが付け合わせについていて、 見た目も楽しかった。 でも何せ夜が遅い。ネネとチャアは眠くて眠くて、食事どころではない。 子供たちがろくに食べないので、きりんとうさぎ二人でせっせと食べた。それでも食事は随分と残ってしまった。

食事が終わると、子供二人にストロベリーアイスが運ばれてきた。
「子供たちにアイスをサービス、サービス」と、さっきの客引きおじさんが気前良さそうに言ったが、きりんとうさぎは、
「さっきは〔4人に一つづつサービス〕って言ってなかったっけ?」と苦笑した。

そのうさぎたちの顔を見ていたおじさんが、ふと調理場の方へ行くと、こんどはとても素敵なフルーツサラダを取ってきた。 それは素敵な一品だった。スイカ、ハパイヤ、メロン、パイナップルが、氷といっしょに皿に盛られている。 真ん中にはデンファレの花。これには子供たちも喜んで、アイスと共にせっせと食べた。

支払いを済ませ、うさぎたちは店を出た。客引きのおじさんは、

「明日も来るといいね!
アイス、マジックショー、サービス、サービス!
日本人、みなサービスね〜!!」

と陽気に言った。
「――マジックショー? ショーなんてやってたっけ?」とうさぎが呟くと、きりんが言った。
「さっきのあのフルーツサラダの名前だよ」と。
ああそうか、とうさぎは笑った。なかなかいいレストランであった。

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