プールでひと泳ぎするうち、魚の餌付けと釣りをやっている時間なのを思い出し、釣堀へ行った。 釣堀に張り出した桟橋には、真っ黒に日焼けしたスタッフと、西洋人の男の子が二人、魚にパンをやっていた。 堀の中を覗き込むと、そこにはシマシマの小さな熱帯魚や、20〜30センチほどもある黒っぽい魚がいた。 それに、いろんな種類のヒトデも。
チャアが自分も魚にパンをやってみたいというので、パンをもらって投げさせた。
そのうち男の子たちが釣りをし始めた。釣りの道具は、丸い輪っかに釣り糸をつけ、その先に針をつけたいとも簡単なもの。
それを見たら、これまたチャアはやりたくて仕方がない。早速チャアにも釣りの道具を借り、そのあとネネも参戦した。
はじめのうち、魚は全くかからなかった。
それもそのはず、パンが水に浮いているので、魚たちはこのエサに気付いてもくれなかったのだ。
しばらく待って、パンが水に沈み始めると、ようやく釣りっぽくなった。
‥とはいうものの、それでもすぐに魚がかかったわけではない。みんなパンだけ食い逃げしてしまうのであった。
小さな魚たちはパンの隅っこの方をちょっとかじるだけなので、
針にはかからないし、大きな魚もあんがい食い逃げがうまい。
――と、男の子が一人、獲物を釣り上げた! 体長が20センチくらいある大物だ。
スタッフのお兄さんが魚を針から外して子供に渡した。魚はその手からつるりとすべって桟橋に落ち、ピンピンはねた。
その子は魚を掴もうと追いかけたけれど、魚は7、8回ほど桟橋の板の上で大きくはねたあと、勢いあまってどっぼーん!
池に帰ってしまった。
しばらくすると、今度はチャアがさっきと同じくらいのを釣り上げ、そのまた後で、今度はネネが釣り上げた。 どうやらここでは観賞用の魚と、釣り用の魚がいるようだ。小さな魚は観賞用。きれいな色で目を楽しませてくれる。 大きな魚は見た目なんの変哲もないが、釣られてくれる。どちらもちゃんと人間様のお役に立っているのであった。
釣った魚はお昼のごちそうにでもできるかと思い、ネネやチャアが釣り上げたときにはちょっと期待した。 けれど係りのお兄さんは針から外すとすぐに魚を掘に返してしまうのだった。 それを見るとうさぎはガッカリしたが、あとで部屋にある案内を読んで納得した。曰く、
釣った魚は料理して食べることができます
その価格は重さに拠ります
釣りを楽しむだけなら、タダです
なのですと。
チャアは釣りがすっかり気に入ったらしく、別の日にもきりんと二人で釣りに出かけた。 動物愛護の精神をもって認ずるチャアかと思いきや、意外と魚の痛みには無頓着。 どうやら彼女にとっては釣りも餌付けの延長で、魚の苦痛にはまるきり気付いていないらしい。 楽しみに水をさすのも何なので、うさぎもチャアには何も言わないでおくことにした。