「このホテルって、しょっちゅう新しい施設を作ってるんだよね。 ウォータースライダーの裏手にあるスパなんか、できてまだ2ヶ月だよ」とマニックスが言ってたのに興味をひかれ、 そのブランニューなスパに行ってみることに。
マニックスの言う"ウォータースライダーの裏手"って一体どこだろう?、と思いながらロックマウンテンも上り、
ウォータースライダーの滑り口から下を見下ろすと、あった! ジャグジーらしきものが見えた。
「あのスパへはどうやっていくの?」、ウォータースライダーの監視員に尋ねると、道の向かい側だという。
‥あ、なんとなく分かったぞ。若いお姉さんたちが座っているところから入っていくんだ、きっと。
あのお姉さんたち、あそこで一体何をしてるんだろう、と不思議に思っていたんだよね。
そうか、彼女たちはスパマッサージのお姉さんたちだったのね。
言われたとおりの場所へ行くと、柵の陰からちょっとジャグジーらしきものが見えたので、そこへ入っていこうとすると、 お姉さんたちに呼び止められた。ここは入場料が必要だという。300ペソ。900円くらい。 とりあえず一度中を軽くみせてもらうと、付き添ってきたお姉さん曰く、ここではマッサージも受けられるのですと。 メニューは200ペソからというので、スパの入場料が300ペソで200ペソのマッサージとは、なんだかお得な気がして、 うさぎは早速マッサージを受けることにした。
でもこのマッサージの受付がちょっと大変だった。
入り口にいた重鎮らしきお姉さんが広げたメニューには確かに200ペソのマッサージがあったのだが、
このお姉さんが1500ペソのマッサージをしきりに勧めてきたからだ。
「こんかいはトライアルで、時間もないことだから、とりあえず‥」と言って15分で200ペソのマッサージを指差すが、
「今日の予定を言ってみて。‥4時からアーチェリー?
ああそれなら、これも1時間ちょっとで終わるから間に合うわ」
でも、15分で200ペソに比べると、1時間15分で1500ペソは割高ではないか。
頭の中ですばやく計算しながらうさぎは言う。
「でもそれはちょっと高すぎるように思うから、またの機会にするわ。今回はとりあえずコレで」
だが、
「ではこちらのはどう? 45分で800ペソだけれど」となおも食い下がるお姉さん。
「とにかくコレで!!」
しまいには押し切る形で、うさぎはそう言い放ち、ようやく200ペソのマッサージを受けることができた。
スパの中にはホットジャグジー、塩水のジャグジー、真水のジャグジーと、3つのジャグジーがあり、
どこでも好きなところでマッサージが受けられるけれど、どこにするかと聞かれたので、寒がりのうさぎは
「モチロン暖かいの!」と答えた。
でもその選択が正しかったかどうかは分からない。
お姉さんは脇に腕時計を置き、それに時々目をやりながら、まず頭、そのあと両手を片方づつツボ押ししてくれたが、
手のマッサージに入ったあたりからゆでダコ状態になり、冷たいジャグジーが恋しくなったからだ。
よっぽど「冷水の方に移りたい」と言おうかなあと思ったけれど、あともう少しだと思って我慢したら、
しまいにはそこにいることが苦行になってしまった。やはり途中で移動すべきだった‥。
マッサージが終わったあと、うさぎは早速水のジャグジーに飛び込んだ。ああ、きもちがいい。
塩水にちょっとだけ浸かり、そのあとすぐに真水へ。
真水のジャグジーには滝があって、肩に滝をあてると気持ちがよかった。
チョロチョロ滝に打たれていると、スタッフが急須に入ったカモミール茶と体を拭くタオルを持ってきてくれた。
それはプール脇のタオルステーションにあるビーチタオルと同じものだったけれど、色が褪め、
端がボロボロになったタオルステーションのそれとは別物のようにフカフカで新しかった。
うさぎはその真新しいタオルに顔を埋め、しばらくお茶を飲みながらまったりすると、スパから上った。
このタオルについては、ちょっと疑問がある。
プールサイドのタオルステーションでは、ボロボロのタオルに一つ一つ番号まで振って、
一枚たりともなくさないようにきっちり管理していた。部屋番号とタオルの番号を書かないと、
決してタオルを貸し出してはもらえない。
その厳重な管理にはびっくりもし、ちょっと可笑しくもあり、またモノを大事にする姿勢に感心してもいた。
けれど、スパのタオルに関してはそうもいくまい。
スパから上ったときにボロボロのタオルを差し出されて喜ぶお客はまずいまい。
タオルが新しいうちはいいけれど、そのうち古くなってきたらどうするのだろうか。
ボロボロのタオルをスパで使うという線はさすがにないだろうし。タオルステーション用に下ろすのだろうか。
なーるほど、それでビーチタオルと同じものを使用しているのかな?
――そんなことを考えながら、うさぎはスパをあとにした。