さて、今日はうさぎがデュオデカスロンに挑戦! 今日プールステーションにいたのはマニックスではなかったけれど、デュオデカスロンをやりたいと告げると、 結局マニックスがどこからか呼ばれてやってきた。 マニックスは、ネネとチャアにも「一緒にやるかい?」と言って熱心に誘ってくれたけれど、 二人ともなぜか頑なに首を横に振り通した。あとで尋ねたら、男のスタッフにキスをするのがイヤだったんですと。
さて、キリマンジャロカフェのエントランスから出発し、まずはモガンボフォールへ。 はだしなので、人工の尖った砂が足の裏に突き刺さり、痛くて速く走れない。
それに、体を使っているときは頭が使えないのね。 モガンボフォールでは、何も考えずに右のスライダーを選んで滑り始めたのだけれど、 滑り始めてからこの選択が間違っていることに気付いた。 着水してからは左手のオリオンビーチ方面へ泳いでいかなくてはならないのだから、 少しでもコース短縮を図るためには左を選ぶべきだったのだ。 タイムがどうのという以前に、つり橋まで無事泳ぎ渡れるんだろうか、とこの期に及んで心配になるうさぎ。
不安になりながらもラグーンを泳ぎはじめると、チャアがどこからともなく現れ、一緒に泳ぎはじめた。
こんなところで一緒に泳ぐなら、最初から一緒にやればいいのに。
デュオデカスロンでの一番の難所はこの長距離水泳だと思うんですけど。でも、チャアのことを気にしている余裕はない。
一体何メートルあるんだか分からないけれど、ここ20年は少なくとも泳いだことのない長さ。
50メートルくらい? ここをなんとしてでも泳ぎ渡らなければならないのだから。
さすがに途中で泳ぎ疲れて、何度も立ちあがって休んでしまった。
けれどつり橋の近くになると、それもできなくなった。だってこの辺、足が立たないんですもの! もう必死!
おぼれるか自力でたどり着くか、二つに一つだ。
半泣きになりながらも何とかつり橋に泳ぎつくと、マニックスが橋の上までひっぱり上げてくれた。
昨日のきりんはここから陸路を走り、釣堀の脇からサーフボードに乗ったけれど、 どういうわけか今日はキッズラグーンの中を走ることに。あんがいアバウトなのね、この競技。 後ろからはいつの間にやらチャアが追いついてきていて一緒に浅瀬を渡ったけれど、 これを「走った」と表現するのは難しい。ラグーンの底がツルツル滑るので、うまく走れない。 それに、水の中の足のなんて重いこと! まるで足かせをはめられているみたい。
やっとの思いでキッズラグーン脇のサーフボードまでたどり着いたが、ガゼボまでの距離を目で測り、ガクゼンとした。 ガゼボまでの対角線って、なんて遠いの! 第一、昨日のきりんとサーフボードの位置が違う。 きりんの方がラクだったんじゃ‥? それでもサーフボードに乗り、手で水を掻く。 しばらくすると、サーフボードが右へ右へと旋回していることに気付いた。これではガゼボにたどり着かない。 うさぎはサーフボードから降りて方向を変え、もういちどサーフボードに乗ってガゼボ方面へと向かった。 けれど、どうしたことか今度は左に旋回し始めた。なんとか方向を直そうと、左手だけで掻いてみたけれど、全然ダメ。 しょうがないからもういちどサーフボードを降りたら、なんとこの辺は深くて、 サーフボードによじ登れなくなってしまった。水は深いわ、サーフボードはツルツルしているわで、登れない。 しょうがないから、サーフボードに手をかけながら、泳いでみたり、歩いてみたり。この辺、ちょっと(かなり?)ズル。
ガぜボでは皆が待ち受けていて、「一口でいいから、早くビールを!」というマニックスの指示に従うと、ゲーム室へ。
カウンターいた女性が差し出す3つの矢を的に投げつけたあと皆が追いついてきたので、
カメラに向かってポーズの一つも決めようと、ダーツを拾おうとすると、マニックスが
「そんなのいいから、早くこっちへ!」
マニックスについてゲーム室を出、道を走り始めると、ロビー近くにスタッフが乗った車が待機していた。
「そら、アイツだ!」と指差すマニックス。気が急いているうさぎは物もいわずにその人に近づき、ほっぺたにチュウ。
ほとんど通り魔の世界である。なんかだんだんマニックスに乗せられてきたぞ。
チュウをしてから振り向くと、皆はやっとゲーム室から出てきたところ。
「今の撮った? え、撮ってない?!」
せっかくの名場面を撮り損ねられてしまい、ちょっとがっかりしながらも、マニックスに急きたてられて自転車に飛び乗った。
追いかけてきた皆の横をすりぬけ、ビーチへ。チャアがなんとはだしのまま追いかけてきて、自転車と並走し始めた。
すぐにギブアップするかと思いきや、いつまでも追いかけてくるので、うさぎは自転車のスピードを落とし、
チャアに合わせた。
「はやく、はやく!」マニックスが呼ぶので、イグアスロッジ付近からチャアに構わず前へ。
なのに、ビーチで自転車を降りてカヤックに乗り込もうとすると、なんとチャアは追いついてきていた!
信じられない! そのスピードと持久力にはもうビックリ! ちょっとこの人、タダモノじゃないかも。
しかも大して息も切らしておらず、元気いっぱい!
「カヤックに一緒に乗る?」と声を掛けると、チャアもカヤックへ。 カヤックはきのう300ペソ払って練習しておいたので、うまく漕げるはずだ。 チャアにも加勢してもらえるし‥と思ったら、オールを渡されたのはうさぎだけだった。 たぶん炎天下の陽にさらされて、鉄でできたオールが焼けるように熱かったからだと思う。 うさぎだって、オールを持たされた瞬間、やけどするかと思ったもの。
何はともあれ、ラグーンに漕ぎ出だす。華麗なオールさばきで洞窟へ。うん、なかなかいい調子。 ちょっと右に寄りすぎてしまったので、左から回るはずの洞窟を右から回ることになってしまったけれど、まあいいや、 このまま洞窟の周りを一周してダイブロックに向かうだけだ――と思ったら、どういうわけだか、 洞窟を回らずにどんどん脇の方へと逸れていき、 ラグーンに張り出したデューンハウスとシュノンソーハウスの間の狭い隙間にハマり、壁に激突してしまった。 あーっ、こりゃ一体どーすりゃいいんだ?! どうやったらバックできるんだろ? オールを持ったままじたばたしてみたけれど、どうにもならない。 チャアに壁を押してもらって少しずつカヤックを回転させ、ようやくその袋小路から抜け出した。
とんだ道草を食ってしまったが、ダイブロックへ急がなくては。 袋小路を抜け出すと、なぜかカヤックは順調にダイブロックへ向かった。 と、ふと後ろを見やると、うさぎのオールさばきを見かねたチャアが、手で水を掻いてくれていた。
ダイブロック付近で上陸すると、さあ、最後のビッグイベント、飛び込みである。これはあえて練習しないでおいた。
だって、練習したってできるようになるとは思えないもの。却って恐怖心が増してもいけない。
土壇場に追い詰められて火事場のバカ力が出ることを期待し、あえて何もしなかったのだ。
でも、ダイブロックから、はるか下の方にある水面をみたら、やっぱり怖い‥!
どうしてこんなところから飛び降りられよう? しかも頭を下にして。
「頭から飛び込むんだよ! 頭からだからね!」というマニックスに従おうと頭を下げてみたけれど、
奇声を発しながら岩の上から飛び降りたときすでに、足の方が下になっていた。これもかなりズル。
4メートルもあるというラグーンの淵に恐怖しながらも浅瀬へと泳ぎ、水から上ると、
マニックスがストップウォッチの数字を見せながら言った。
「17分36秒。がんばったな。ウン、がんばった」
「そう悪くはなかったわよね、そう悪くは」とうさぎが言ったら、
「ウン、悪くなかったよ」。ほんと、案外悪くなかった。きりんの倍はかからなかったものね。
デュオデカスロンをやったあとは、そんなに疲れてはいない気がした。でも、なんだか気分が悪い。 それでデッキチェアに横になったら、やっぱり熟睡してしまった。 きっと、自分が疲れているのも分からないほどに疲れていたのだろう。 けれど、チャアは元気! サイクリング部分を走ったことで余計疲れているはずなのに、昼寝もせずそのままプールで遊び続けていた。