ゆうべは夜遅くにパラオに着いた。
税関を出ると日本人のツアー係員が近づいてきて、
「どちらのツアーのお客様ですか?」と話しかけてきた。
「いえ、今回はツアーではなくて‥」と言うと、
「あっ、そうですか。でも万一お迎えの方と会えなかったらいつでも声を掛けてくださいね」
うわあ、なあんて親切なんだ〜! 思わず持っているプラカードに目を落とし、会社名を確かめた。 よしよし、その名、しかと覚えておくぞよ。
幸い、「お迎え」はすぐ見つかった。 腕にたくさんのレイをぶらさげて。 やるじゃないの、キャロラインリゾート! 空港で歓迎のレイをかけてもらうの、夢だったんだ♪
◆◆◆
リゾートに着いたのは、もう寝る時間だったから、 部屋に着くなり、ろくに部屋のつくりを確かめもしないまま、 歯磨きだけしてベッドにバタンキューだった。
それがいけなかったのかもしれない。 朝の6時、みんなが騒ぎ立てる声で目が覚めた。 曰く、「トイレが開かない〜!」 のですと。
きっと誰かが夜中にトイレに立って、ドアのカギをロックにしたまま、外に出るとき バタンと扉を閉めてしまったのだろう。 ドアは中からロックされて、外からでは開かない。 部屋のカギで開けてみようとしたけれど、残念、それではダメみたい。
結局、朝っぱらからレセプションに電話して、カギを開けてもらうことに。
やってきたスタッフは鷹揚な雰囲気のヒゲのおじさんで、
「ああ、これは大工を呼ばなきゃダメだな」と言った。
「カギはないの?」と尋ねると、
「もうないな」。
こんな朝早くに大工が呼べるものだろうか。 一体いつになったらトイレに入れるのだろう? そんな心配をよそに、割とすぐ、大工道具を携えた別のおじさんがやってきて、 たちどころにドアを開けてくれた。
感謝感激雨あられ! ドアが開くのをじっとこらえて待っていた面々はわれ先にと、早速トイレに飛び込んだ。 うさぎは、朝っぱらからひと働きしてくれた大工のおじさんに気持ちばかりのチップを渡した。 おじさんは、不思議なものでも見るように、1ドル札をこすって眺めると、 ニッと笑って「サンキュー」と言った。 おや、パラオでチップって、ヘンだったかしらん?
――まあいいや。 無事トイレにも入れたし、朝食の時間までもうひと寝入りしようっと。