Sudan  首都ハルツーム

<<<   >>>

【 ことの顛末 】

新聞

このあとわたしたちは、タクシーで一度訪れたことのあるスーパーまで行ってもらい、 そこで買い物をし、今度こそラクシャに乗って家まで無事帰り着きました。

ママはすごく心配してくれていたようで、わたしたちの帰りを喜んでくれました。 でもそこでサイフをなくした話をすると真顔になり、わたしが昼寝から起きたときには、 お手伝いさんから家族から、家中にその話が広まっていました。

一見心配してくれているようですが、みんな目がキラキラしているのはなぜ〜?(笑) いつなくなっているのに気づいたか、バスは混んでいたかなど、根掘り葉掘り尋ねられ、 それに答えると、皆にわか探偵ぶりを発揮し、 「わたしはやっぱりバスの中だと思う」「いや、新聞記者が怪しい」など、大討論会のはじまり。

面白いのは、みんな「盗まれた」と思っていること。 わたしのうっかりぶりを知る日本人の友達は「絶対落としたんだよ」と確信を持って言うのですが、スーダン人はみな「盗まれた」と言う。 ・・・というより、そういう展開を期待している、といったほうがいいかな(笑)。

現地の事情に詳しい人によれば、真相はどうあれ、この話が数日中に、親戚中、ご近所中に広まるのは ほぼ間違いないであろう、とのこと。 それだけ事件とか刺激の少ない日常なのでしょう。

友達は、「これだけ親切にしてくれたスーダンという国に喜捨したと思えばいいのよ」と言うし、 わたしはそれに加え「みんなに格好の話のタネを提供できてよかった」と思うことにしました。

◆◆◆

ところで、例の新聞記者ですが、本物の新聞記者でした。 翌日、念のため彼が言っていた新聞を買ってみると、なんと、本当に載ってた!! しかも、裏表紙のど真ん中に、紙面の3分の1くらいの大きさで、カラー写真と共に、どどーんと!!

この新聞、その名も「新聞」という名の新聞で、ハルツームでは有力紙の一つだそうです。 知人の話では、「日本でいえば、朝日ってとこかな」とのこと。

「象の研究にやってきた日本人女性二人は、ハルツームには剥製の象しかいなくてがっかりしている」という誤認と創作の入り混じった記事なのですが、 最後は「5年前まではハルツームにも動物園があったのに、新ホテル建設のために取り壊され、今では象もいなくなってしまった」という、 社会批判めいた文章にまとまっていました。

そんな記事が書かれているとはつゆしらず、 その動物園跡地に出来た新ホテルでのんきにジュースなんか飲んで帰ってきたわたしたちって一体・・・。

この記事を見つけてすぐ、もう何部か買いたそうと思い、買ったスタンドに舞い戻ったのですが、 「見て見て! わたしたちが載ってるの!」と見せると、近くにいた人たちがみな新聞とわたしたちの顔を見比べて、大笑い!

見ず知らずの人とこんなふうに笑いあうなんて、日本ではなかなかないことですよね。 こんな楽しい思い出を作ってくれたあの新聞記者を邪険にしてしまい、悪かったなあと、あとから思いました。

とまれ、サイフを落としたり、憲兵に捕まったり、新聞に載ったり。大冒険の一日でした。

<<<   ――   1-6   ――   >>>
TOP    HOME