タングリンモールの中にマクドナルドがあることは、昨日の夜すでに確認していた。 ちょっと入ってみたけれど、 店のしつらえにもメニューにも、特に日本と違った点は見受けられずにがっかりしていた。
ところが今朝もう一度訪れたら、なんと朝食メニューにおかゆがあることを発見した!
これはシンガポールらしいと喜んで
カウンター上方に掲げてある写真めがけてカメラを向けたら、
険しい顔をした中華系のオバチャンに、「ノー」と怒られてしまった。
あらら、写真はダメ?
実を言うと、シンガポールでカメラを取り出して咎められたのは、これが初めてではない。 あちこちでもう何度も叱られている。 DFSの隣りのビルできれいな色のベッドを撮ろうとしたとき、 スーパーに並んだ色とりどりの果物を撮ろうとしたとき、 ホーカーズで頼んだ料理にカメラを向けたとき‥。 それにセントーサ島に遊ぶクジャクを撮ろうとしたときも、 「コラコラ」と叱られてしまった。
どうしてだろう? 今まで他の国でカメラを取り出して叱られたのは一度しかない。
ドイツでパトカーを撮ったときだけだ。
マクドナルドで写真を撮るのはうさぎの恒例行事だけれど、
それで叱られたのももちろん、前代未聞だ。
第一、お店の中はまだ分からなくないとしても、
なぜ野生のクジャクを撮ってはいけない?
うさぎは咎められたカメラをしまいながら、内心憮然とした。なにさ、イジワル!
ところが、そのお粥をオーダーすると、 険しい顔でうさぎを咎めた同じオバチャンが菩薩様のようにやさしい顔をして、 「おかゆ、好き? これすごくおいしいよ」と言ったのには驚いた。
この一件で、写真に関しては何かきっと特別な事情があるに違いないと思い、 あとでガイドさんに尋ねて分かったことだが、 お店の中などで写真を撮るのは縁起が悪いと中華系の人々は考えるらしい。 なんでも、運気が下がり、商売が下降するのですと。 自分はそんなのは迷信だと思うけれど、年配者にはそう信じている人も多い、と彼は言った。 なるほど、 そういえばうさぎを咎めた人たちはみな例外なく女性で、年配者が多かった。
ともかくも、うさぎはマックのお粥を手に入れてホテルの部屋に帰った。
自分の部屋に帰れば写真を撮ろうが何しようが、咎め立てする人はいない。
うさぎはマックのお粥を気が済むまで写真に収めた。
発砲スチロールの容器にたっぷり入った白い粥は、 赤い唐辛子、緑のネギ、淡い色の鳥のささみがたくさん乗っていて華やかだった。 それに赤いチリレンゲがついてきた。 中国では赤は魔よけの色。 集合住宅の玄関先にも赤いちょうちんが飾られているのをあちこちで見た。 配管を赤く塗りたくっている建物も見た。 赤いレンゲを添えた白いお粥は、まるでシンガポールの国旗みたいだとうさぎは思った。
それでは恒例の一句。
星の国 赤いレンゲに 白い粥