うさぎの心配は杞憂に終わり、車は広い門を抜け、ちゃあんとラグナエリアに到着した。 それまでの山道とは打って変わり、広々とした空間が広がっている。 黒光りするラグーン、きらきらと輝くホテルのイルミネーション。夢のようにロマンチックで美しい光景だ。
アラマンダは、ゲートもなく、突然道の両側に現れた。
三階建ての建物が道に沿ってうねうねと両脇に続いている。
その真ん中付近の車寄せに車は止まった。
車を降りて建物の中に入ると、簡素なフロントとこじんまりとしたラウンジがあった。
そこでチェックインやら簡単な打合せを終えると、ポーターが部屋まで案内してくれた。
敷地がたいそう広く、なんとロビーから部屋に行くにも車であった。
部屋は、広々とした芝生の庭の隣にあり、
旅行のパンフレットに書かれていた部屋よりも更に広い139平米のメゾネット、
その名も"Duplex(複層) Villa"であった。
一階がLDK、二階に一部屋 (浴室付き) 、三階にもう一部屋 (シャワー付き) 、そしてその上に屋上がある。
調度品に籐をあしらったインテリアは、リゾートらしさとエキゾチックさを同時に醸し出している。
テーブルの上の花瓶にはデンファレの花が差してあった。
それまで車に酔ってゲンナリしていたネネと、すっかり舟を漕いでいたチャアは、部屋のドアを開けた途端、 いきなり元気になり、ワーッと歓声を上げた。
「このおうち、二階がある〜!!」
と、マンション育ちの子供たち。
ポーターが部屋の中に靴を脱がずに部屋に入ると、
「あれっ、靴を脱がないの?!」とネネが驚いて言った。
ポーターは日本語が分かったのか、あわてて玄関の外に靴を脱ぎに行き、裸足で入りなおした。
ドアの脇にはキー(正確に言うと、キーに付いているプラカード)を投げ込むスリットがあり、 主電源のスイッチとなっていた。 つまり、ここにキーが差し込んでない時は、この部屋の電源は全てオフになる仕組みなのだった。 照明やエアコンを消し忘れても、あるじが外出中の時は自動的にオフになる仕組みになっているのだ。
部屋についたのはまだ8時前だったので、
きりんとうさぎは出かけることにした。
ネネとチャアは自分たちが使う部屋をさっさと決め、せっせとクローゼットに服を並べてパジャマに着替え、
声を揃えて「おやすみなさーい!!」と元気に言うとベッドに滑り込み、そのまま眠ってしまった。
うーん、なんてしつけの良い子供たちなんだ。感心しちゃう。