5時頃はまだ夜だったあたりは、6時頃からだんだん白みだし、7時頃にはえも言われぬ美しさになった。
この部屋はラグーンに張り出すように作られており、右手にアラマンダ、左手にシェラトンが浮かぶ湖水の景色を、
大きな掃き出し窓から大パノラマで見ることができる。
深い碧色のラグーンは凪いでおり、そこで遊ぶ数羽の水鳥がわずかに水面を揺らすのみ。
時折やってくるシャトルボートが細い線を描いてゆく。
ピッと張ったその水面はまるで鏡のように、シェラトンの優美な姿を上下逆さに映している。
静けさというものを絵に描いたら、ちょうどこんな景色になるだろう。
外の景色を眺めていると、ここに来て良かったとしみじみ思う。それどころか、「生きてて良かった」とまで思う。 窓から見える景色の美しいことが、こんなにも幸せな気分にさせてくれるだなんて‥。
8時頃、部屋を出て、散歩しながらフロントへ。
ラグーンと道に挟まれて、横に延々と連なるアラマンダの建物は、
西洋的な薄ピンクの壁にタイ風の切妻屋根をのせた、何とも繊細でロマンチックな雰囲気の建物だ。
フロントはアラマンダの横に長い建物のちょうど中央にあり、そこをラグーン側に出ると、
船着場との間にメインプールと庭園がある。
青々とした芝生が赤っぽいレンガのインターロッキングに映え、所々に植わっている木のまわりには、
強い香りを放つ白い花が散らばっている。
枝からはらりと落ちたプルメリアの花だ。整えられた生け垣には南国の黄色い花。
このホテルの名の由来であるアラマンダの花だ。
そここちらの大きな鉢には色とりどりのブーゲンビリアが咲き乱れ、
青黒いタイルを敷きつめたプールめがけて素焼きの龍が水を吐く。
360度、どっちを向いても、完璧に美しい。胸がきゅんとするような繊細さ。泣きたくなるほどに優しい雰囲気だ。
プールの近くで景色に見とれていると、他にも何組かの人々がやってきて、カメラのシャッターを押すよう頼まれた。 みな日本人のような顔だちだが、どうやら日本人ではないらしい。日本語でも英語でもない言葉が飛び交っている。