Essay  うさぎの旅ヒント

【 バカンスは忙しい 】

先日、どこかの掲示板で、 南の島のバカンスにどんな本を持っていくかという話題が盛り上がっていた。 一冊二冊に留まらず、みなさんたくさん本を持っていかれるご様子。 なるほど、そういえばリゾートのプールサイドなどで本を読んでいる方をよくお見かけする。

でも、うさぎはリゾートに行くのに本を持って行かない。
なぜかというと、読んでいるヒマがないからである。

では、なぜヒマがないのかというと。
?? ‥なぜなんだろう?
買い物や観光にはほとんど行かず、ひねもすホテルのプールサイドで過ごしているのに、 どうしてこんなに忙しいのか、自分でも不思議である。 ‥だけど、忙しいことだけは確かで、アッという間に時間が過ぎてしまい、 日に一つか二つの予定すらこなせずじまいだったりして。

あ〜本当に、どうしてこんなに忙しいのだろう?!

それを探るために、今回は、バカンスで過ごす一日を振り返ってみることにした。

AM7:00
起床。
そこら辺を片付けたり顔を洗ったりしているうちに、なんとなく一時間ほど経過してしまう。

AM8:00
ホテルの朝食ビュッフェへ向かう。
豊富な料理に目移りしながら、皿にあれこれ盛り、まずは料理の写真を撮る。
それから食べ始め、 食べ終わっては新しい皿を一杯にし‥を数回繰り返したのちに部屋に帰る。

AM9:30
水着に着替え、自分と子どもたちの体に日焼け止めをまんべんなく塗りつける。

AM10:00
ようやく準備が整い、皆でプールエリアへと繰り出す。

プールで早速遊びはじめる子どもたち。
久しぶりにプールに入る子どもたちはいつも、 これ以上はない、というほどの満面の笑みを浮かべる。 その笑顔を、うさぎはカメラに、きりんはビデオに収める。

AM10:30
「パパ、ママ一緒に遊ぼうよ〜!」と、子どもたちからお誘いの声がかかる。
まあちょっとだけなら‥と水に入り、シンクロナイズドスイミングの真似事をしたり、 背中に抱きつかれながら泳いだりして、遊ぶ。

AM11:30
1時間ほど遊ぶと、ぐったり疲れてしまう。
「どうしてママはすぐに疲れるの?! もっと一緒に遊ぼうよ〜!」 という子どもたちの声を振り切り、陸に上る。
デッキチェアに寝そべり、しばらくは何もする気が起きない。
きりんと子どもたちが水しぶきと歓声を上げるのを遠くから眺めつつ、すこしうとうとする。

PM1:30
「ママーッ! お腹が空いたーっ!」という子どもたちの声でハッとする。
服に着替えてレストランに赴くのは面倒なので、プールサイドで軽食を頼むことにする。

オーダーが済むとそそくさと水の中に戻り、
「料理が運ばれてきたら呼んで」と叫ぶ子どもたち。
うさぎは、きりんと子どもたちが一緒に遊んでいるところを、 プール脇のテーブル席からビデオに収めつつ、 料理が運ばれてくるのを待つ。

料理が運ばれてくると、みんなで食事。これも写真撮影から始まる。

PM2:00
食事が済むと、子どもたちはまた水の中へ。
うさぎは売店でも物色しようと思い立ち、 水着の上からサンドレスをひっかけ、ホテルの建物の中へ。

PM2:30
絵はがきなどを物色してから店を出ると、ふとホテルの探検を思い立つ。
オープンエアの廊下を歩いていると、何人ものスタッフとすれ違う。
笑顔には笑顔で応えているうちに、だんだん頬の筋肉が疲れてくる。

ときどき何かの不具合を修理している工事現場に出くわし、 足を止める。うさぎは工事現場が好き。 日本でも外国でも、人が作業をしている光景に出くわしたら、足を止めずにはいられない。

ふと、道端にしゃがんで両腕でほおずえをついている自分の姿に気づく。 真剣になりすぎて、眉間にシワまで寄せている。
小さな子どもじゃあるまいし、いい大人が‥と一瞬恥かしくなるが、次の瞬間には開き直る。

さて、そろそろ行こうかと立ち上がると、スタッフが作業の手を止め、声をかけてくる。
「こういうの見てるの、面白い?」って。
コクリと頷き、二言三言会話を交わし、次のスポットへ移動。 ホテル内には面白いものがいっぱいで、見飽きることがない。

PM3:30
フィルムが残り少ないことに気づき、部屋に戻って、新しいフィルムを補充する。
ついでに、ルームサービスが入ってきれいになった部屋の写真を撮る。
ルームメイドが手を触れなかった脱ぎちらしの服を隅にどけ、何枚か撮る。
そのうちふと時計に目をやり、現在時刻に仰天し、 子どもたちのことを思い出して、プールに戻る。

PM4:00
「ママどこ行ってたの〜? パパ寝ちゃったよ〜!」 という子どもたちの声に迎えられる。
デッキチェアに目をやると、なるほど、きりんが伸びている。

「ママ、一緒に遊んでよ〜! ちょっとぐらいは遊んでくれたっていいでしょー?」 と言われて、しぶしぶ水の中へ。
30分ほど、鬼ごっこやらシンクロスイミングに付き合うと、そろそろ風が冷たくなってくる。

PM4:30
「ほらもう上ろう、風邪を引くよ」と子ども達を促し、自分はとっとと陸に上る。
「もうちょっとだけいいでしょ? お願い!」と子どもたち。
「分かった。じゃ、5時までよ!」と返事をし、 びしょぬれになった重たいビーチタオルを何枚もタオルステーションまで返しにいき、 新しいのと取り替えてくる。

PM5:00
水の中にいる子どもたちに声を掛けて、乾いたビーチタオルで体を包んでやり、 ようやく部屋に引き上げる。

部屋に帰ると4人分の水着を洗う。すぐ洗わないと、カルキで色が醒めてしまう。
そのあと、バスタブに湯を張り始める。
湯が溜まるまで、ベッドの上に集い、トランプで遊ぶ。

PM5:30
子どもたちと入浴。
「3人で入ると狭い」などとワイワイガヤガヤいいながら、 バスジェルの泡で遊んでいると、すぐに1時間が経過。慌てて夕食の算段に取り掛かる。

PM6:30
お風呂から上った子どもたちはすでに目をこすっているので、 慌ててレストランを探しに出る。 レストランを探しているうちに、 部屋で待っている子どもたちが空き腹のまま眠ってしまっては体によくないと思い、 とりあえず、 日本から持ってきたカロリーメイトや、飛行機の機内から持ち出したパンなどを与えておく。

PM7:00
ようやく夕食レストランがあちらこちらで開き始める。
どこで夕食をとるかを決定し、急いで部屋に戻る。

しかし時すでに遅し。
ベッドの中ですやすやと寝息を立てている子どもたちを発見する。

仕方がないので、きりんとうさぎだけで夕食に出かける。

PM8:00
料理の写真撮影から始まる食事を終え、部屋に帰ってくる。
きりんはビデオのバッテリーの充電、うさぎは山のような洗濯物を持って洗濯室に出かける。

洗濯機を動かすトークン(コイン)がないことに気づいてフロントまで買いに行ったり、 空いている洗濯機がなかったりと、いろいろなハプニングに見舞われ、 洗濯室と部屋の間を何度か往復する。

ようやく洗濯物を洗濯機に入れてスイッチオンにできたら、部屋に一旦帰る。
洗濯が終わるのを待っている間に、金銭帳をつけ、残った現金を数える。 日本円にして100円以下の誤差なら気にしないが、もし100円以上違ったら、 何かを付け忘れている証拠。レシートの束と格闘しながら、何を忘れているのかを考える。

PM9:00
洗濯物を見に行き、洗濯が終わっていたら乾燥機に移して、また部屋に戻る。

乾燥が終わるのを待っている間、こんどは、一日の予定を思い出す。
何時に何をしたかをタイムテーブルに書き込み、 言葉を交わしたスタッフの名前の綴りや、食事の感想などをメモする。
ときどき洗濯物の乾き具合を見に、洗濯室へ足を運ぶ。

PM10:00
ようやく一連の洗濯作業が終わる。あとは寝るだけ。
ベッドに入って、昼間に売店で買った本を眺める。

PM11:00
いつの間にか夢の中へ。ああ疲れた。でも楽しかった。おやすみなさい‥。

‥と、こんな感じ。
やっぱりバカンスは忙しい。

2002年11月16日 うさぎ

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