でこぼこコンビの夫婦茶碗
子供のころ、実家の茶箪笥には、連れ合いを亡くした夫婦(めおと)茶碗の後家さんコーナーがありました。
最初はペアの夫婦茶碗。 似たもの同士のおしどり夫婦は、大きさの違いゆえ、別の運命をたどります。 たっぷり大きいほうは父ばかりか母までが愛用し、年中無休の大活躍。 細身の小は洗いづらいと嫌われて戸棚の奥から出てこない。 せっかくのペアなのに、一緒に並んで使われることは滅多になく、 そのうち決まって大が先に割れ、小ばかりが遺されるのです。
写真はわが家の茶碗です。 細身の背高ノッポは夫、ふっくら小太りなのがわたしの湯呑み。 容量的にノミの夫婦です。
夫の湯呑みは昨年の秋、益子の陶器市で彼が自分で見つけたものです。 竹の節をそのまま切り取ったようなデザインが気に入ったのだそう。 これで大好物のコーヒー牛乳を飲んでいます。
わたしの湯呑みはつい先ごろやってきたばかり。 お茶の緑が映える白で、手に馴染む大きさ・形を探していたところ、 ちょうど誕生日にこれを見つけました。 信楽焼だそうです。
大きさも形も、生まれも育ちも飲むものも、全く異なる二つの茶碗は、 でこぼこコンビのおとぼけ夫婦。 これはこれで風情があるでしょう?
おや、誰ですか、「体型といい、本人たちにそっくりだね」なんて言ってるのは――。
初稿:2007年3月22日