2003年7月26日 ブルネイ旅行記(その14)

サンマルクという ベーカリーレストランにランチを食べに行きました。
ここを訪れるのは今日で3回目。 ベーカリーだけあって、とにかくパンが美味しい店なんです。
しかも、お料理を頼むと、ほかほかパリパリの焼きたてパンが食べ放題!
店のコンセプトは

ファミリーレストランよりも高級でディナーレストランより手軽に

なのだそう。
なるほど〜、って感じです。本当にそんな感じ。
うさぎの誕生日に食べにいった 梅の花 もそうでしたが、 「庶民でも無理なく手が届く程度の贅沢さ」といったところかな。 うさぎは勝手に、

「シャングリラレベル或いはシェラトンレベルの外食産業」

と呼んでおります(^^;。

最高級とはいえないまでも、かなり満足度の高いファシリティ。
激安とはいえずとも、ほんのりリーゾナブルな納得価格。

安さ追求型でも頂点極め型でもない、一番美味しい中トロ部分が、 うさぎの女心、もとい、消費者魂をくすぐるのです。

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それはさておき。サンマルクへは自転車で行きました。 ネネはランチのあとバレエのレッスンに直行するので、 行きはきりんとチャアが二人乗りで行き、 帰りはネネの自転車にチャアが乗って帰ってくることにしました。

でも、ネネの自転車は26インチ。チャアが26インチの自転車に乗るのは初めてです。 なので、行く前にちょっと練習。
‥おお、乗れました、乗れました! 足が地面につかないけれど、ペダルには充分届いています!

実はね、これはバリ行きの予行演習でもあるんです。 ウブドの村を自転車で回れたらいいな、って思っているのですが、 どうやらバリの貸し自転車屋さんは子供用の自転車を扱っていないらしい。 なので、チャアが大人用の自転車でも乗れるかどうか、 これを機会に試してみたのです。

さて、チャアが自転車に乗れることを確認し、サンマルクへ出発〜! 今日はあまり暑くなかったので、気持ちよくサイクリングできました。
本当に、今年は一体どうしちゃったんでしょうね。7月の下旬だというのに。 エアコンを2台も買ったのに、まだ一度も使っていません。 電気代がかからなくてラッキーなような、 せっかく買ったエアコンが勿体ないような‥? そんなことを考えながら、自転車を走らせました。

30分自転車を駆って店に到着した頃には、みんなお腹がグウグウ‥。 そこで、手っ取り早く 「シェフおすすめランチコース@1,480円」を4人分頼むことにしました。 本当はチャアには「お子様フルコース@1,280円」の方がいいかな、と思ったのですけれどね、 「大人用でいい」とチャアがいうので、食べきれるかなあ??と思いつつ、 皆と同じものにしたのです。

ところがところが、実際料理が出てきたら、チャアの食べること食べること!
最初にスープ、次にサラダときて、 その合い間には焼きたてのパンが何度でもサービスされます。 いろんな種類のパンを一人一つづつ貰っては食べていたら、 うさぎなんぞはメインディッシュの前にすでに腹八分状態になってしまっていました。
けれど、チャアはケロリとした顔。 「まだちょっと食べ足りない感じかな」ですと。

メインディッシュである「チキンのフリカッセチーズ風味」をペロリと一人で平らげ、 うさぎの「若鶏と彩り野菜の炭焼き」にもすこし手をつけ、 更に次々と焼けるパンをその都度一つ二つもらって消化。 デザートの柚子シャーベットを食べたあとにも、 「私はもうけっこうです」と断わるうさぎを尻目に、 まだまだ貰って食べ続けるチャア。 チャアのその食べっぷりには、もう唖然!
もともとチャアは痩せててちっちゃくて、あんまり食べない方なのに。
ああ、この子も大きくなったんだなあ、って実感しました。
もう大人用の自転車に乗れるくらい大きくなったんですものね‥。

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【 ブルネイ旅行記14 二つのモスク1 】

ブルネイには、「オールドモスク」、「ニューモスク」 と呼ばれる2つの壮大なモスクがある。
この二つのモスクは、この小国の数少ない観光名所であり、 ブルネイに行ってこれらを見ないで帰るのは パリを訪れて凱旋門を見ないで帰るようなものだ。 うさぎたちにしても、この2大名所を見ないで帰るわけにはいかない。

動線の関係で、うさぎたちが先に訪れたのは「ニューモスク」の方だった。 正式名称を「ジャミヤシル・ハサニル・ボルキア・モスク」といい、 現サルタンの名前を冠している。

昨日も王宮へ向う途中、遠くにこのモスクが見えたものだ。 純金張りだという本堂の大きな丸屋根、そしてそれを取り囲む4本の尖塔が、 青い空にくっきりと映え、強い日差しを受けてギラギラと輝いていた。
「明日はぜひ近くまで行って、この豪壮なモスクを写真に収めるぞ」と、 意気込んだものだった。

けれど、今日実際ここに訪れてカメラを構えたうさぎは困ってしまった。
あまりに壮大すぎて、写真にうまく収まらないのだ。 とりあえず黄金を葺いた屋根だけでも、と思い、 見上げるようにカメラを向けたら、 屋根が跳ね返した陽の光で目をやられそうになり、とっさに目を瞑った。

これは近すぎる。せっかく敷地内に車を止めてもらったのだけれど、 門の外に出て、写真を撮ることにした。

ところがこれはこれで具合が悪かった。
モスクの敷地は黒と金で華やかに彩られたフェンスで囲まれており、 なかんずく正面には高々とそびえる実に立派な門扉がついている。 それが豪奢なのはいいのだが、肝心の建物がそれに邪魔されて見えない。
うさぎは、モスクに近づいてみたり、下がってみたりといろいろやってみたが、 結局うまいアングルは見つからず、もう一つ納得のいかない写真しか撮れなかった。

ならば、第三の作戦。 こんどは、門扉の隙間にレンズをつっこんで狙ってみることにした。

ところが、これも上手くなかった。
門の中は中で、門扉からモスクの正面入り口までずらりと椰子の並木が続いており、 これが邪魔してモスクがほとんど隠れてしまうのだ。 右から狙ってみたり左から狙ってみたりもしたけれど、どこに陣取ってもダメ。 うっそうとした椰子の木が、モスクを見上げる視線を見事に遮ってくれる。

さんざあれこれ試してみたけれど、赤道直下の日光の下、 頭がクラクラしてきたので車に戻った。

仕方がない、あとで絵はがきでも買うことにしよう

そう思うほかはなかった。 ところが絵はがき用の写真を撮るフォトグラファーも、 うさぎと同じジレンマに悩まされたらしく、あまり良く取れているものはなかった。
たった一枚、数年前に撮ったと思われるものだけが、 壮麗なモスクの姿を撮ることに成功していたが、 それは、正面玄関前の椰子の並木がまだあまり育っていなかったからであった。

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さて、次に訪れたのは、「オールドモスク」。
こちらは正式名称を「オマール・アリ・サイフディン・モスク」といい、 先代のサルタンの治世に、 その名を冠して建立されたモスクである。 完成は1958年というから、ブルネイはまだイギリス領だったはずだ。

正直に言うと、運転手のカエリさんがこのモスクの正門付近に車を止めてくれたときには、 ちょっとガッカリしたものだ。
オールドモスクこそは「ブルネイの顔」であり、 数少ないツアーのパンフレットや、ガイドブックの一番目立つところには まず間違いなくオールドモスクの写真が貼ってあったから、 さぞや美しく壮麗なモスクなのであろうと思いきや、実際はそれほどでもなかった。

ニューモスクに比べるとそう大きくもないし、 さすがに半世紀近い歳月を経ているので、真新しい感じもしない。
第一、正門にはチャラチャラした安っぽい電飾コードが下がっていて、 その電飾コードが写り込んだ写真は到底撮る気にはなれないのだった。

ところが。ふと思い立ってもう少し車を進めてもらい、 モスクの敷地を円く取り囲んでいるラグーンをはさんでモスクを拝んでみると。
そこには、観光ガイドなどで見た美しい写真と寸分違わぬ それはそれは美しいオールドモスクの姿があった。

このモスクの敷地はほぼ円形であり、その円を四等分にした一つを残し、 あとの4分の3には水が引かれ、モスクを囲むように人工ラグーンが作られている。
その人工ラグーンには、16世紀の王室の御座船のレプリカが浮かべてある。 正確に言うと、「船が浮かんでいる」のではなく、 「船のように見える石作りの建造物が建っている」のだ。

ところが、この石船の美しさといったらなかった。 いや、石船が格別美しいのではない。 華やかに彩色された石船、それがラグーンに映りこんだ影、 後ろにそびえる白亜のモスクとその金色に輝く丸屋根、そして南国の青い青い空‥。
それが合わさると、完璧な美しさとなるのだった。

見る場所によっては、モスクから石船へと続く道は都合よく石船の裏に隠れ、 船はこの丸いラグーンの上に浮かんでいるように見える。 遠目にはできたばかりに見える真っ白なモスクをバックに、 石船にほどこしたカラフルな色彩が、ラグーンの単調な水面に変化を与え、 まさにアラビアンナイトの世界そのもの!

一体どんな人がこのモスクを設計したのだろう、とうさぎは思った。 白亜のモスクと色鮮やかな石船を水面に映しこみたい一心で、 わざわざ敷地の4分の3ものスペースを掘り、水を引いたのは誰なのだろう。
その目論見は見事に当たり、 半世紀近く経ち、もっと壮麗なモスクが新しくできた今になっても、 そのフォトジェニックさが買われて、 ブルネイの顔として不動の位置を占めている。 はたしてそのことを、設計者はご存知だろうか。

ところで。 美しいモスクの景色から振り返った逆側には、また別の世界が広がっていた。 ラグーンの周りにめぐらされた狭い道の反対側は、 広大なゴミ溜めと化した湿地帯なのだった。 衣類、壊れた電化製品、ペットボトル、新聞‥。 ありとあらゆるものが沼地に捨てられ、異臭を放っている。 こちら側はもう、アラビアンナイトどころの騒ぎではない。

かたやうっとりするような光景、ふと後ろを振り返れば、うんざりするような現実‥。 そのあまりのギャップに、うさぎは、まるでテレビを見ているみたいだと思った。 テレビの中の美しいおとぎ話に夢中になり、それが終わって我に帰ってみれば、 そこは散らかり放題の部屋であった、というようなギャップにそれは似ていたのだ。

つづく