さいきんうさぎはちょっぴりだけど、仕事をしています。 何の仕事かって――?
いわゆる「ウェブデザイン」と呼ばれる仕事です。 要するに、他人様のウェブサイトを作って、お金をいただいているのであります。
いつもやってることと同じじゃん!
ハハハ、今そう思ったでしょ?
全くその通り〜!
要するに、オンでもオフでもウェブサイトを作っているわけです。
でもね、やはりお金をいただくというのは大変なことだと実感しています。 自分のサイトなら、多少不備があろうとも、実害はない。 リンクを貼り間違えて画像が表示されなかろうが、特定のブラウザでどうレイアウトが崩れようが、 「まあ、趣味でやってるので‥。ハハハ」と笑ってごまかしてしまえます。 だから、ろくに確認もせずに見切り発車してしまうこともあります。
でも、仕事ではそうはいきません。 何度も何度も確認して、それでもミスがあるんじゃないかとハラハラドキドキします。
まあ、「バグのないプログラムはない」と言われるように、 全くミスのないウェブサイトもなく、 第一、どんな環境でもカンペキに同じに見せるというのは不可能で、 100%完璧な仕事というのは、誰の手によるものであれ、ありえないとは思うのですが、 でも仕事である以上、100%を「目指すべき」だとは思っています。 今回は、IE(インターネットエクスプローラ)、ネットスケープそれぞれの最新バージョンおよび、 サファリの最新バージョンキャプチャーで確認の上、納品しました。 デザイナー泣かせのネットスケープ4.*に関しては、意図的にスタイルシートをオフにしました。 それでも、マッキントッシュ版IEや、サファリの旧バージョンのことを考えるとすごーく不安です。
また、ミスしないこと以上に難しいのは、好みの問題です。 仕事を発注してくださったお客様が、どんなウェブサイトをお望みなのか、 どんなデザインがお好みか、それに沿っていかなくてはならないことです。 一般的にはどんなに美しく機能的なウェブサイトであっても、お客様のお好みに合わなければ、 それはいい仕事とはいえない。 色、配置、アクセシビリティ‥。 自分のサイトならば、自分さえよければそれでいいのですが、仕事では好き勝手できない辛さがあります。
だいたい、その「お客様のお好み」を把握すること自体がこれまた難儀です。 かっちりしたデザインがお好みか、ふんわりした雰囲気がお好みなのか。 それすら最初の時点では分かりません。 「どんなデザインがお好みですか」なんてバクゼンした伺い方で 「これこれこういうの」と明確な答えが得られるはずもなく、手探り状態です。
そこで最近お引き受けした仕事では、 まず最初に3種類のデザインをご用意し、それぞれ3ページほどサンプルを作って お客様にご覧いただきました。 一つはヨコの線を強調したデザイン、次はタテの線を強調して作りました。 そして最後の一つは、ナナメと曲線を意識しました。
実際にお客様にご覧いただくと、最後のデザインが最もシンプルでお好みだということで、 色もレイアウトも全くそのままで構わないとのことでしたので、 そのデザインをベースに、全てのページの製作を開始しました。
そうして出来上がったのが、以下のウェブサイト(全11ページ)です。 すでにお持ちのウェブサイトを、内容はそのままに、デザイン面でのリニューアルをお引き受けしたものです。
こちらのサイト製作にあたり、わたしが心がけたのは、「見やすさ」と「更新のしやすさ」です。
「見やすい」とは具体的にどういうことでしょうか。
それはまず、「目などが疲れにくいこと」だと思いました。 小さな文字を目で追うのは疲れます。 また、大きすぎる文字というのも、首や目の大きな動きが必要で疲れます。 あまり小さすぎず、また大きすぎない文字がいいと思いました。 フォントサイズの固定については、否定的な見方が多いのですが、 そもそもフォントサイズを変更できることを知らないユーザが多いことから、 当サイト同様、サイズを固定することにしました。 また、行間も狭すぎず広すぎず、英文と和文では設定を変えました。 段落も多めに分けました。
また、「分かりやすさ」も「見やすさ」の一つではないでしょうか。 たとえば、リンク部分がリンクであると分かること。 あまりリンクに過度な装飾を施すと、リンクがリンクと分かりづらかったり、 未訪問先と訪問済みが分からなくなってしまいます。 サイトイメージにマッチした色・デザインを採用しつつも、 基本的にリンク部分の色をブルー、未訪問リンクには下線つけるなど、リンクの特徴を残し、 マウスをのせたときには文字色を変えるなど、はっきりリンクと分かるようにしました。
それから、これこそが「ウェブデザイン」の最大の意義だと思うのですが、 「感じが良いこと」も「見やすさ」の一つだと思います。 言い換えれば、「もっと見たいと思わせる」ということでしょうか。 尤も、そのサイトが提供するものによって、どんなデザインが「もっと見たいと思わせるか」はまちまちです。 たとえばハイテク企業のサイトならば、「爽やかさ」と「落ち着いた感じ」が信頼感を生み、 「もっと見たくなる」でしょう。 でも一方、子ども向けの楽しいゲームサイトだったら、落ち着いた感じよりも、 むしろ明るくて元気の出るようなデザインのほうが「もっと見たくなる」のではないでしょうか。 要は、コンテンツの内容や閲覧対象者のニーズにデザインが沿っていることが大切だと思うのです。 今回は大学の研究室のサイトですので騒々しいデザインは避け、さりとて硬すぎない雰囲気を心がけました。
「更新のしやすさ」に関しましては、 スタイルシートを全面的に使用し、画面デザインと内容を完全に分けることにより、実現しました。 規範となるべき論理的なマークアップを心がけ、 タグの対応が分かりやすいよう、邪魔にならない程度のコメントを入れました。 また、スタイルシートを一切触らなくても済むよう、 どのような設定をすればどのような見た目になるかという因果関係を簡便に説明した「更新の手引」をお付けしました。 実際、納品してからの一週間の間に、すでにあちこち更新されたようで、とても嬉しく思っています。
従来、ウェブデザインというのは「完成品」として納品されるというイメージがありました。 プロのデザイナーが作ったものは一寸の隙もなくデザインされ、 レイアウトテーブルを使ってかっちりと組まれているものが多く、 それを更新するのは恐れ多いかんじがあります。 実際、複雑なソースは更新が難しく、 ヘタをすれば文章をほんの1行2行増したり減したりしただけで レイアウトがガタガタに崩れてしまう可能性もあります。
まあ、大企業のページはそれでも良いと思うのです。 専属のウェブデザイナーがいて、更新作業もその人任せにできるのなら、それで支障はありません。
でも、ほとんどのウェブサイトは、 専属のウェブデザイナーを雇えるような大企業のページではありません。 最初はプロに作ってもらったとしても、あとの更新はそのウェブサイトの持ち主が自分でしなくてはならないのが実情です。 でもその更新作業ができないために、せっかくのウェブサイトが雨ざらし状態になっていることが、 なんと多いことでしょう。 これではせっかくのウェブサイトも宝の持ち腐れです。
わたしが納品するものは、ある意味「完成品」のつもりではありません。 その時点に於いてなるべく完成度の高いものをお納めしようとは思いますが、 わたしの手を離れてからが本当の勝負どころであるとも思っています。 そのサイトの本来の持ち主である方の手にお渡しした後、 その方に愛され、必要に応じて更新され、発展していかれるウェブサイトであってほしいと願っています。
これからも、自分で更新したい方が最初の一歩を踏み出すためのお手伝いをしていかれたらいいな、 と思っています。 そしてそれによってわたしも世界が広げられたらいいな、と思っています。
今回も、ウェブサイトをお手伝いがご縁で、クライアントである先生の著作をいくつか拝見しました。 一つはコンテンツの中に入っている英語の論文。 まさか英語の論文を読むことになろうとは思わなかったのですが、 段落分けを増やす必要があり、内容を読まないと段落分けってできないんですね。 ‥結局一晩かけて全部読みました。
それから、主だった著書を何冊か。 生物学の本なんて、こんなご縁でもなければ一生読まなかったと思います。 でも、読んだらとても面白く、興味が湧きました。 せっかくなのでみなさんにもご紹介してしまおう。
「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学」(左)
「絵ときゾウの時間とネズミの時間 たくさんのふしぎ傑作集」(右)
左の新書版はベストセラーなので、たいてい図書館に置いてあると思います。 右は同じテーマの子供向けの絵本で、こちらも人気シリーズに入っているので わりとあるのではないででしょうか。 絵本のほうは簡単に読めるので、見つけたらぜひ読んでみてください。
小人国へいったガリバーは、その国の人々の何倍食事をとったでしょうか。
ゾウはネズミの何倍ご飯を食べ、何倍生きるでしょうか。
大きい動物と小さい動物、どっちがお得?
――そういう疑問に答えてくれる本です。