Australia  ハミルトン島とケアンズ

<<<   >>>

【 船酔いクルーズ 】

海

6時半起床。天気は晴。今日は船でグリーン島へ行く。

ホテルから歩いて5分の桟橋につくと、チケット売り場は大勢の人でごったがえしており、 さて船は、と見ると、カタマランやフェリーが何艘か並んで待機していた。

グリーン島へは約45分のクルーズ。
「グリーン島に行く船ってすごく揺れるし、死ぬほど酔うわよー」とは知人の弁。
カタマランでありますように、と祈った甲斐もなく、 グリーン島へ行くのは普通のフェリーだった。ここでちょっと不安になるうさぎ。

船に乗りこむと、 早速うさぎは船内のバーまで酔い止め (ジンジャー・タブレット) をもらいに行った。
「タブレットが欲しい人はこの注意書きを見て。妊娠している人は飲めないよ〜」 と、ひょうきんな黒人のクルーが大きな目をくりくりさせて自分の下腹を撫でながら、 歌うように言った。
「OK、大丈夫。どうぞご心配なく〜!」とうさぎも歌うように返し、 タブレットと水をもらった。 飲みなれた日本の酔い止めの方は効き目は確実だけれど、 「漢方みたいな酔い止め」という昨日のハナコさんによる触れ込みに、 ちょっと試してみたくなったのだ。

ところが、これが無謀だった。

桟橋を離れ、外洋に出ると、船は水しぶきを上げながら波間をぐいぐいと突き進んだ。 ホワイトヘブンビーチへと向かうカタマランの優雅なクルーズとは大違い。
これはマズイぞ、と感ずいたうさぎは、 「揺れがもっとも少ない」 とクルーが教えてくれた船の真ん中付近に陣取ってじっとしていた。

ところがそこへ日本人クルーがやってきて、写真入りのパンフレットを見せながら、
「ついでにアウターリーフへ行かれてはいかがですか」 などとセールストークを展開してきた。 なにしろこの船、乗客の半分が日本人。 そのおかげで船内放送が日本語なのはありがたかったが、 セールストークの方も、ありがたいことに日本語なのであった。
だけど今、うさぎはセールストークなど聞ける状態ではない。

‥お願い! 今話しかけないで!

と目で訴えた。だけど分かってもらえない。
手で口のあたりを押さえ、うつむいたままのうさぎ。

と、しばらくして、セールストークを一方的にまくしたてていたお姉さんは言った。
「あの‥、どうかしました?」

‥この状態を目にしてなお、お分かりいただけないとは。
質問に答えるどころではなく、吐き気をこらえていると、お姉さんは行ってしまった。

目を閉じてうつむいたまま、しばらくじっとしていると、 だれかが日本語で「あのう」と話し掛けてきた。
目を上げると、さっきとは別の日本人クルーの顔があった。

気分が悪いのを聞きつけて介抱しにきてくれたのかしら?

その優しげな面持ちに、うさぎは期待した。

が、それはすぐ失望に変わった。
彼女はわたしが目を上げると、やおらパンフレットを開き、こう言ったのである。
「アウターリーフへの予約はまだお済みではなかったですよね」と――。

<<<   ――   6-1   ――   >>>
TOP    HOME