船はグリーン島に近づき、長い長い桟橋の先っちょに停泊した。
珊瑚の浅瀬に守られているこの島に、大きな船は近づくことはできない。 島から伸びた長い長い桟橋が、船から島までの唯一のアクセス手段なのである。
珊瑚礁に囲まれているのみならず、そもそもこの島自体が珊瑚でできている。 発達した珊瑚が水面まで届き、そこに鳥が集い、 鳥のフンに紛れたり、波に乗ってこの島に流れ着いた植物の種子が芽を出し、 更にその植物が落とした葉が腐って土ができ――という具合に、 自然が永い時間をかけて現在のグリーン島を作ったのだ。
ちなみに"グリーン"の名はその豊かな緑に因るのではなく、 この島に最初に上陸した白人・キャプテンクックと同じ船に乗っていた 植物学者の名なのだそうだ。
グリーン島は国立公園内にある。
だからこの島の土地はオーストラリア政府のものである。
だが、グリーンアイランドリゾートのオーナーは日本企業である。
ライオンズマンションの大京観光。
数年前、大京はオーストラリア政府からこの島をそっくり借り受けて、
ここにリゾートを作った。ここに日本人観光客が多いのはそのせいだろうか。
グリーン島は、長い辺でも 400メートル足らず、一周が徒歩で15分ほどの小さい島である。 同じリゾートアイランドでも、その規模はハミルトン島とは違う。 ここにあるのは、宿泊用のコテージと、プール、それにレストランが二つある程度。 あと、なぜか家族経営の小さなワニ園があった。
長い桟橋を渡りきると、うさぎは早速子どもたちの要請でプールへ行った。
朝の9時半。まだ気温も低く、風が冷たすぎるのではと思ったが、
水は充分にぬるんでいて、温かかった。
水が口に入ると、ちょっと塩辛い。海水が混ぜてあるのだろうか。
この島で人間が使用する水はなんと全て本土から船で運んでくるのだそうだ。 小さな島なので、とても人間さまの使用する分までは降雨でまかなえないのだと聞いた。
なるほど、それではプールの水をおいそれと取り替えるわけにもいくまい。