屋外のレストランで、 この島でもまた鳥たちの羨望のまなざしを集めつつ美味しい昼食を食べたあと、 うさぎは島内散策ツアーに参加してみた。
このツアーのコンセプトははっきりしており、
それは、島内のそここちらに生えている木、落ちている実などの説明を通して、
この島独自の生態系や自然保護の試みを伝えることであった。
このツアーに参加すれば、
グリーン島に関するウンチクを手軽に頂戴できるという寸法である。
この散策ツアーで最も印象に残った話。それはヤシの木についての話であった。
緑濃いグリーン島の植生はほとんどが自然の手によって作られたものだが、
ヤシの木だけは人間の手で植えられたものだというのだ。
この辺りは海が浅く、船が座礁しやすい。
難破した船の乗組員の為の飲み水および食料となす為、
130年ほど前に西洋人が植えたのだそうだ。
ところが今日では、繁殖力旺盛なヤシがこの島本来の植生を脅かしており、
困っているという。
ヤシの実はどこででも芽を出してしまうし、葉は繊維が多くて腐りにくい。
現在はヤシの実や葉を積極的に処分しているそうだが、
捨てた実からも芽が出るのが悩みのタネだそうだ。
130年の歴史を持つ植物でさえ困った「新参者」と見なされるあたりが、
この島の歴史の長さを物語っているではないか。
ちなみに、「ヤシの実に当たって死んだ人はいない」という流言はデマだそうで、
もう少し北の方 (つまり暑い方)の島では
サメに襲われて死ぬ人よりも、ヤシの実に当たって死ぬ人の方が多いそうだ。
それを聞いてしまったら、どうも頭の上の方が気になってしかたがなかった。
島内散策をするうちに、うさぎたち一行は、三チャン稼業のワニ園の前にやってきた。
ワニ園の前にはサイフが落ちており、通りすがりの西洋人が拾い上げようとした。
するとサイフはするするっとワニ園の中に入ってしまった。どうやら糸がついているらしい。
外人さんたちがあっけに取られていると、中から小学生くらいの悪ガキが二人顔を覗かせて、
外人さんを冷やかした。
うさぎたちがもっと先のビーチまで行ってここへ引き返してくると、
またサイフが落ちていた。誰かが拾おうとすると、案内役の女性が言った。
「ああ、それは放っておいて下さい。あの子たちの遊びなんですから。
年中こんなことばかりやっているんですよ」