ケアンズセントラルは、ケアンズ駅の駅ビルショッピングセンターである。 子供を遊ばせられるスペースがあるのを昨日確認していたので、買い物がてら皆で出かけた。
「子供の遊び場」は有料スペースで、ボールプールやら滑り台やらトランポリンやらが 迷路のように組み合わさった遊具がおいてあった。 遊具の前には椅子とテーブルがあって、 親がそこで子供の姿を眺めながら休めるようにもなっている。 入口にはガッチリとしたゲートがあって、勝手に出入りが出来ないようになっていた。 子供の誘拐を恐れてのことだろう。
さて、きりんに子供たちの監督を頼み、うさぎはショッピングに出かけた。 ここは総合スーパーと100店舗くらいの専門店街で構成されている。 閉店まで時間があまりないので、案内図で本屋、子ども服の店など、 興味のある店の場所をチェック。大急ぎでスポットだけを回った。
絵本を求めて本屋に入ると、ずらりと並んだポケモンの絵本の前で、
小学生の男の子が、床にベタッと座り込み、一心腐乱にそれを読んでいた。
その脇で、絵本を手にとるうさぎ。オーストラリアの国民的愛唱歌
「ウォルティングマティルダ」の歌詞を物語化した絵本だ。
うさぎは朗らかな調べのこの歌が好きで、
子どもの頃、英語の歌詞の意味も分からず口ずさんでいた。
ところが。ある日、その歌詞の意味を知ってビックリ!
それはとんでもなく暗かったのであった。
貧しい白人の小作農が盗みを働き、憲兵に追い詰められて湖で溺死するという‥。
なんでもそれは、オーストラリアの反骨精神の象徴なのだそうだ。
うさぎには理解しがたいこの反骨精神を、
オーストラリアの人々はどうやって子どもに伝えていくのだろう。
そう思いつつ、絵本を眺めた。
抑え気味の色調が気に入ったので、絵本を携え、レジへ。
ところが、ふとサイフの中身が気になり覗いてみると、
案の定、小銭ばかりで1000円程度の本一冊が買えるだけもなかった。
あとできりんのところに戻って小遣い銭をもらってこよう――と思いつつ、
なおもSC内を歩いていたら、突然、店々のシャッターが一斉に閉まり始めた。
時計を見ると、もうすぐ5時半。
閉店時間が5時半だとは知っていたが、その定刻閉店ぶり、
いやむしろフライング気味の閉店にはびっくり!
慌ててきりんのところに戻ると、
やはり遊び場から定時に追い出されたらしい3人がフードコートの隅でうさぎを待っていた。
「お金〜〜!」と叫び、サイフを持って、本屋へ取って返す。
‥が、時すでに遅し。本屋のシャッターも下りた後であった。
ああ、万事休す。明日はもう日本に帰るのに。 ひどくがっかりしたが、仕方がないので、また皆のもとに戻った。
「子供たちの様子はどうだった?」とうさぎが尋ねると、
「ピカチュウのパーカーさえ着ていれば、チャアは世界中どこへ言っても人気者だね」
と、きりん。
西洋人の女の子がピカチュウパーカー珍しさにサヤに近づいてきて、
一緒に遊び始めたのだそうだ。
したり顔でうなづくうさぎ。
うさぎ手製のこのパーカーは、
これまでも海外で幾度となくコミュニケーションに一役買ってきた。
海外で誰とでも仲良くなれる魔法のアイテムなのであった。