すっかりお昼の時間になってしまったが、さあ滑るぞ!!
空は青々と澄み渡り、広々と視界の開けた右手には、お隣りのブラッコム山の真っ白な雄姿。
気温は高すぎず、低すぎず、まことに爽快である。
まずは昨日レンタルショップで貰った大きなゲレンデ地図を広げてみる。 難易度によって、コースの色とサインを違えて書いてあるのがありがたい。
山頂駅から下へ降りていくルートはいくつもあるが、その中でも最も勾配の緩い初心者向けルートは、 ここから『アッパー・ウィスキー・ジャック』から『ポニー・トレイル』に入り、 『エクスプレス・ウェイ』を通って、ゴンドラの中間駅『オリンピックステーション』に達するルートである。 本当なら、中間駅から村までもスキーで降りていかれるルートがあるのだが、 ゲレンデの下の方はまだ積雪が充分でないため、今は中間駅が終着駅で、 中間駅からはゴンドラに乗って村に帰らなくてはならない。
さあて、どの道が『アッパー〜』かなー? うさぎたちは標識で道を確認し、滑りはじめた。
だが、ほんの数十メートルも行くと、ちょっと不安になってきた。
多分このコースでいいのだろうけど、
本当に本当に、絶対間違いないかな?
念を入れて確認しなくちゃ。
こんな雪山では、「うっかり道を間違えちゃいましたー」では済まない。 中級・上級コースに入ってしまおうものなら、大変なことになる。生還できるかどうかも分からない。 きりん以外の三人は、スキーは「やったことはあります」程度。思いっきり『若葉マーク』なのだから。
「すいませーん、『アッパー・ウィスキー・ジャック』って、この道ですよねぇ?」声を張り上げ、 近くにいた日本人のおじさんに尋ねてみる。だが、その人は何も答えず、その代わりにゴーグルを外して見せた。 なーんと!! ゴーグルを外したその顔は、バリバリの西洋人であった! あららー、この人、全然日本人じゃなかったのねー、失礼しました。うさぎは英語で非礼を詫びた。 目が隠れていると、人種さえ見分けられないとは。人の風貌を決定するのは、主に『目』なのね。
さて、英語に切り替えて西洋人のオジサンに確認をし、『アッパー〜』を皆で滑り降りる。 広い道幅をいっぱいに使って、ボーゲンでうねうね滑る。
さあ右だあああーっ、
今度は左いいいいーっ、
って感じ。道幅は広く、積雪も充分。圧雪をかけてきちんと整備されたコースの滑り心地は上々。 所々にスティープな場所もあるが、それも長くはなく、またすぐフラットになるので、初心者のうさぎでも、 何とか滑べれる。
ここは初級コース。そここちらに
"No fast skiing"(スピードを出してはいけません)
とか
"SLOW"(ゆっくりと)
などと書いた立て札が立っている。
が、そんな立て札は見えぬかのごとく、エライ勢いで滑り降りていくスキーヤー・スノーボーダーたちも少なくない。
本当なら中級・上級コースを滑っているはずの人たちがどうしてここに?、と思うが、まだ積雪が充分でなく、
滑れるコースが限られているせいだろうか。
むこうはうさぎたちなど余裕で避ける自信があるのだろうが、こっちはぶつかるのではないかとハラハラ、ドキドキ。
道幅は広いし、人影は疎らだから、実際にはさほど事故は起こらないかもしれないけれど、
坂を横切るうさぎたちめがけて上から直滑降で来られると、ホントーにコワイ。
こっちは動く障害物を避ける技術なんてないから、そっちで確実に避けて行ってね。
避ける技術のない人は、お願いだからスピード出さないで。
と真剣に祈ってしまう。