さて、今日はウィスラーで過ごす最後の日。昨夜遅かったというのに、7時前には目覚めてしまった。 なんだか喉が渇き、こんなに寒い街にいるというのに、どういうわけかシャーベットが無性に食べたい。 それで、まだ薄暗い外へ。 まだ8時前とあって頼みのIGAが開いていないので、 昨日シャトルバスの車窓から見たセブンイレブンに行ってみた。
セブンイレブンは、やけに陳列棚が少なく、カッサリとしていた。大きな冷蔵棚も冷凍棚も、中はガラガラ。 コンビニと言えばアイス類が充実しているものだと思っていたが、さにあらず。 アイスクリームは何種類かあったが、シャーベットは遂に見つからなかった。 しかたなく、真っ赤なイチゴのスムージーを大きな紙コップ一杯分買ってみたが、これは意外と美味しかった。 店の前で試しに一口飲んでみたらハマってしまい、凍てつく朝のウィスラービレッジを歩きながら、 この冷たいフローズンドリンクをちびちび飲んだ。なんかだんだん体が寒さに慣れてきたのかも。
スムージーを置きにいったん部屋に戻り、すぐにまた街へと引き返した。
まずは写真屋でおととい撮った写真を注文してこなくては。
写真屋はゲレンデ前のコーストウィスラーホテルの中だ。
おとといの夜にすでに一度店を訪れ、大きなモニターで写真の出来栄えを見せてもらったのだが、
一番小さな2Lサイズ2枚セットでも32ドル(2400円位) とそう安くはないので、とりあえず
「また明日撮ってもらうかもしれないので、また後日選びに来ます」と店番の金髪美人に告げ、
注文しないで帰ってきた。でもさすがプロが撮った写真は色出しがきれいで、画像が鮮明。
これを諦めて日本に帰ることなどできないのであった。
今日の写真屋の店番は、日本語が上手なスキンヘッズのマッチョマンだった。ポジフィルムをモニターにかけて貰うと、 うさぎたちのスキーウエアを見て、彼は
「オー、4人ミンナ、トテモ、派手! そこがいいね〜」
と褒めてくれた。そうでしょうとも。 最近は地味なウエアが流行りのようだけれど、 うさぎたちのはバブル時に流行った派手〜なやつをフリマで手に入れたものなんですからね。 そんじょそこらのウエアとはひと味もふた味も違うわけよ。
うさぎは5枚撮った写真のうち2枚を注文し、
「明朝帰国するので、今日のうちに仕上げて欲しいのですが」と頼んだ。だが、
「それは無理」とマッチョマン。「でも、でき上がったら日本に送ります。送った方が、安くなりますよ」
送料が掛かるのに、安くなるとはこれいかに? それは、日本に送る写真には税金が掛からないからなのであった。ここウィスラーの物品税(消費税)は高い。 カナダの国税である連邦税7%に加え、ブリティッシュコロンビア州の州税が8%、合計15%もかかる。 32ドル分の写真を買うと、税金は4.8ドル。それに対して送料は4ドルだから、僅かとはいえ、 確かに安くなったのであった。
写真屋を出てちょっと街をぶらぶらして時計を見ると、もう9時を回っていた。
部屋を出てからいつの間にやら一時間が経過している。
ちょっと買い物に来ただけなのに、どうしてこんなに簡単に時間が経ってしまうんだろう?
きっと感覚で感じるよりも、この街は広いのだ。
建物も道幅も、日本の街並みよりもスケールが大きいので、それで距離感覚が掴みにくいのだろう。
それに、美しい街だから歩くことが苦にならない。だからやけに時間が早く経つような気がするのだ。
本当に、今もこの街の美しさといったら‥!
街は曇り空のせいでブルーグレーに染まり、
建物の屋根や石畳にうっすらと積もった雪が白いアクセントとなっている。
背景となる二つの山には霧がたちこめてぼやけており、それゆえ街の輪郭がくっきりと際立っている。
その青白い街を、街灯の暖かな光がポツンポツンと小さく照らしている。
まったく、晴れた昼間も夕暮れどきも夜も、そしてこんな曇り空の朝までも、 どうしてこの街はこんなにも美しいのだろう? それは、きれいなものが寄り集まった美しさではなく、余計なものが何もないがゆえの美しさだ。 余計な形、余計な色、余計な音や余計な匂い、五感を煩わせる余計なモノが何もない。 誰かが不用意に捨てたゴミや、車の騒音や排気ガス、 浅知恵による馬鹿げた装飾などといった余分なものが何もない。 余分なものがないから、自然の美しさ、人工的な造形美の美しさが際立つのだ。