Essay  うさぎの旅ヒント

【 美しきリゾート 】

こんなに美しいリゾート、他にあるわけがない

海外のリゾートに行くと、いつもそう思う。
「旅行どうだった?」と人に尋ねられて最初に出てくるセリフは、
「今まで行った中でも、最高のリゾートだったわ!」

そう言ってしまった後で、口を押さえる。

よく考えてみれば、前のリゾートもすばらしかったじゃないの。
今回のリゾートがホントに一番かしら?

そういう疑問が湧いて、いままで行ったリゾートの一つ一つを思い出し始め、 うさぎはしばらくの間、無口になる。
そして結局、いつもその答えは見つからない。

プーケットのラグナエリアに滞在して、 瀟洒なホテルの輪郭が広大なラグーンに正確に映し出されるのを見たとき、 こんなに美しい場所は、世界に二つとあるわけがないと、心から信じた。
けれど、その「世界一」をすでに経験してしまったことがなんだかさみしく、 他にもそれに匹敵するリゾートはないか、と必死で探した。

そうして見つけたのが、グアムのレオパレスリゾートだった。 そしてこのリゾートの部屋の窓から外を見たら、 プーケットとはまた違った雄大な自然が眼下に広がっていて、あっけにとられた。
そして思った。 「遠くの山なみまで続く広大な緑の芝、 そこにポツンポツンと並ぶオレンジ色のコテージの屋根。 こんな美しい景色が他にある?」って。

次の年に行ったペナン島。 「わたしは愛する」という意味の名のリゾート「ラササヤン」で、 見事な枝ぶりの大木の葉の合間から夕日の光がプールの水面に零れ落ちるのを見て、 また思った。 「こんな美しい景色は二度と見ることができないだろう」と。

だけど、美しい景色はまだまだあった。

淡いひすい色のプールに葉が影を落とすオーストラリアのハミルトン島。
真っ白な帆のクルーザーが真っ白な砂浜近くに優雅に停泊するホワイトヘブンビーチ。
藁葺き屋根の向こうに夕日が沈むフィジーのマナ島。
雪の白と朝もやの白、それに白熱灯の暖かい白が互いを引き立て合う街を見て、
「こんな美しい街並みが現実に存在するなんて!」と思った冬のウィスラービレッジ。

今年2月に訪れたセブのプランテーションベイでは、 あたりがむらさき色に包まれる夕刻のラグーンに 暖かな色のイルミネーションが輝くのを見て、 また「こんな景色は‥」と、溜息を漏らした。

海、山、川、森。自然は本当に美しい。
だけれど、プール、ラグーン、芝、植栽、街、灯り。
そこに人間の手が加わると、自然は更に美しくなる。
美しいものを思い描くことのできる人の手が加わると、 自然の持つ荒々しさはなりをひそめ、 マイルドに、エレガントに、そしてひとなつこい表情になる。

もうこれ以上、最高に美しい景色を発見するのは無理かもしれないと、 つい心配してしまうが、それは見くびりすぎというものかもしれない。
まだまだ世界には想像を越えた自然があり、奇想天外な発想の人がいる。 美しい景色は一生かけても見きれるものではないと、そう信じたい。

2002年9月7日 うさぎ

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