部屋に帰って洗面所に積んだ汚れた衣類にふと目をやると、アリが何十匹もたかっていた。 栄養分の溶けだした人間の汗がアリにとって貴重な食料なのは分かるが、 このアリたち、一体どこから部屋に入ってきたのだろう?
衣類を振って払い落とそうとすると、アリたちは一目散に逃げだした。
洗面台と鏡の間の細いシリコンの詰め物の上を、一直線に並んで。
彼らが逃げる方向を目で追うと、その先には小さな穴があいていた。
どうやらここから部屋に進入してきたらしい。
うさぎは日本から持ってきたセロテープを穴の上に張って塞ぎ、きりんがその上から虫除けをスプレーした。
これでよし。これでしばらくは入って来ないだろう。セロテープが浮いてきたら、また張り直せばいい。
しかし驚いた。部屋の中にこんなにたくさんアリが入ってくるなんて。 マナのような素朴なリゾートならいざ知らず、ここは一応高級リゾートだと思うんですけど。 ま、一階だからしょうがないのかな。
最初は「マナに比べるとずいぶん都会(?)だな」と思ったフィジアンも、丸1日暮らしてみると、けっこう素朴。 シャワーの水はうす黄色いし、ルームメイドの仕事には手落ちがある。 ロールペーパーが切れていたり、バスタブに落としておいた使用済みタオルがそのままになっていたり。 やっぱりここってフィジーなんだな。アリの一件もあって、妙に納得してしまった。