さて両手に買い物袋を持ってペイレスを出ると、最終バスの時間までまだ30分ほど時間があったので、 うさぎたちはクリスマスカードを探しにでかけた。 ペイレスにもクリスマスカードがあるにはあったのだが、全て「ダース売り」だったのである。
アガニャSCのコの字の縦棒部分の一端はペイレスによって占められていたが、その先には両脇に小売店が並ぶ廊下があり、 更にその先の、もう一端に"Town House" (タウンハウス)という別のスーパーがあった。 どうやらここは衣料品中心のスーパーらしい。 興味をそそられたうさぎは、重い袋を持ってお疲れ気味のきりんを廊下のベンチに残し、タウンハウス探訪に出かけた。
店内は広く、やはり衣類が主だったが、雑貨や玩具売り場もあった。
そしてクリスマスを目前にした今、売り場の目抜きを飾るのは、何といっても目も彩なクリスマスグッズであった。
さすがはアメリカ、クリスマスグッズの種類が豊富で、それに割かれた売り場も広い。
ツリーを飾るオーナメントセットの他に、サンタクロースからのプレゼントを入れる大きな布製の靴下、
リースなどのドア飾り、おびただしい数のクリスマスカード、それに可愛い可愛いクリスマスパーティー用の子供服などなど、
赤、緑、金色と、クリスマス気分を盛り上げる商品があっちにもこっちにも満載であった。
特にうさぎが憧れたのが、パーティー用の子供服(専ら女の子用)。
幼児用が一番充実しているものの、ティーンエイジャーのものまで揃っており、価格は$60〜$80くらいと手ごろである。
エンジや黒のベルベット地に、金や銀のリボンなどをあしらった服は、ストーリーブックエアルームズのノリ。
それはそれは可愛らしかった。でも、どうしてみな半そでなの? 不思議〜。‥いや、不思議ではないかもしれない。
ここは常夏の島グアムなのだから。でも厚手のベルベット‥。
いやいや、グアムじゃパーティに行くのに、外を歩いていったりはしないのだろう。
エアコンの効いた車で、エアコンの効いた家から家へ。きっと衣類で温度調節する必要なんてないのだろう。
――うーむ、リッチ〜! 広いリビング、ゴージャスに飾られた大きなツリー、テーブルにはご馳走‥。
そんな素敵なパーティも、きっとここでは当たり前。うさぎたちにしてみても、ここならそんな夢が叶う。
ここでドレスをネネたちに買っていって、広いレオパレスのリビングでパーティをやろうかな‥。
――と、ふと、悲しいかな、日本のわが家の住宅事情を思い出してしまった。
ベルベットなのに半そでのドレスなんて、一体そんなグアムでしか着られないもの、
いったい狭いタンスのどこにしまうの?!――って。
子供服売り場には、他にも普通の服が売っていたが、当然、夏服ばかりだった。
パーティドレスがダメならせめて実用的な服でも、と思って探してみたのだが、
いまいちうさぎの好みのものはなくてがっかり。
ちょっとびっくりしたのが、レオタードを売っていたこと。生地がぺらぺらだったけれど、タイツ付きで10ドル台とは安い。
日本だとタイツだけで2000円する。第一、日本ではスーパーにレオタードが売っていたりはしない。
靴屋にもダンスシューズやタイツが売っていたし、本屋にはバレエの本が何冊も置いてあった。
きっとここはバレエやダンスをする人の比率が日本よりも高いのだろう。
二階部分には玩具売り場もあった。けれど、内容はいまいち。
レゴやプレイモビルなど、長い期間をかけてひとつづつ揃えていくような恒久的なおもちゃがなかったのだ。
さて、名残惜しいが、もうバスの時間が迫っている。 うさぎは「グアムからメリークリスマス」と書かれた夏っぽい絵柄のクリスマスカードを数枚ばかり買っただけで、 タウンハウスを後にした。