Guam  親孝行の旅

<<<   >>>

【 徹夜明けの朝 】

恋人岬

夜中はずっと眠れなかった。
「旅先で枕が変わると、絶対に眠れないのよ、あたし。だから今回は睡眠薬と精神安定剤を持ってきたの」 と盛んに言っていたままりんは隣のベッドで身動ぎもしない。
〔あーあ、あたしもその『睡眠薬』とやらを貰って飲むんだった〕などと思いつつ、することがないので、 アクビをしてはトイレへ行き、というのを夜中じゅう、ずっと繰り返していた。

朝の7時過ぎ。何度目かのトイレに立って、帰ってくると。
「あなたも結局、一睡もできなかったのね」とままりんが言った。
「えっっ? ママも眠れなかったの? てっきり熟睡しているんだとばかり思っていたわ」と、うさぎ。 うーむ、恐るべし母の眼力。母は娘が眠れていないのを見抜いていたが、娘の方は母のことを見抜けなかったのだー。

夜が遅かったので、モーニング・コールは9時に頼んであったけれど、どうせもう眠れないので、 二人とも起きることにした。
顔を洗おうと、二人で洗面台の大きな鏡の前に立つと、二人ともひどい顔をしていた。
そりゃそうだよ。二人とも、全く眠ってないんだもの‥。

カーテンを開けると、バルコニーの向こう側には、青い青い海が広がっていた。
右手側にウェスティンホテルが見え、海を隔てた向こうの岬には、 ツルが真っ白な羽を広げたようなホテル・ニッコーが見える。
そして更にそのずっと向こうには、恋人岬。恋人同士が髪を結び合わせて身を投げたという伝説の絶壁は、 本当にすごい断崖絶壁だ。

リーフホテルには二つの建物があり、この部屋は「ビーチタワー」という建物内にある。 ビーチタワーは海岸線に対してほぼ垂直に建っているので、内陸側へ行くほど海が見えにくくなる。 ところがこの部屋は海側から数えて二つ目の部屋、しかも最上階なので、景色が良いのだった。

<<<   ――   2-1   ――   >>>
TOP    HOME