Malaysia  ペナン島

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【 ビーチ 】

パーティの準備

他の三人がゴールデンサンズのプールで遊んでいる間、ちょっと体調のよくなったうさぎは、貝殻を探しに、 そのプールエリアの前のビーチに出た。けれどもこの砂浜にはあまり貝が落ちていなかった。 二枚貝はほとんど見つからず、たまに小さな細い巻き貝がある。サンゴは皆無だ。うさぎは貝を探して、うつむいて歩いた。

と、突然、ばさーっ、と何かがうさぎにかぶさった。

なんだ、なんだ? びっくりして見ると、パラセイリングの幌だった。 どうやら、勢いをつけて飛び立たせようと、ビーチボーイズが引っ張っていた幌をかぶってしまったらしい。 うさぎはあわてて側から離れ、また貝殻探しに夢中になった。

そしてしばらくしてふと前を見ると、 こちらに向かって客のパラセイリングの幌を浮上させようとしているビーチボーイと目が合った。 彼はうさぎを見ると、いきなり険しい顔になり、あっちへいけ、と手ぶりで示した。 うさぎは反射的にそれに従いながらも、ムッとした。 失礼しちゃうわね。何もうさぎがいるところで幌を飛ばさなくたっていいじゃない。別の方向に走っていきなさいよね。 アンタの客のためだけのビーチじゃないんだからさ。

ムカムカしながらそれでも貝殻を捜していると、誰かがうさぎの前にサッと手を差し出した。何かを握っている。 見るとそれは、さっきとは別のビーチボーイだった。 そのひとなつこい笑顔を見て、うさぎは彼が貝をくれるんだな、と思った。

だが、うさぎが手を出した途端、彼がそこに載せたのは、何か茶色いものだった。 〔貝じゃない!!〕と思ったとたん、得体のしれないものへの恐怖が沸いてきて、うさぎはきゃっ、と叫び、 茶色いものを取り落とした。その様子を見ると、彼はサッと身を引いて笑った。

――やだ、からかったのね!! うさぎは顔がほてってくるのを感じた。 けれど彼の笑い方はいやな感じではなかったので、軽いジョークだということが分かった。 取り落としたものを改めて眺めたが、それは虫などではない、ただの木の実か何かだった。

だが、うさぎの様子を見て、向こうの方で腹を抱えて大笑いをしている男がいた。さっきの厭味なビーチボーイだ。 その姿を目にしたとたん、うさぎはムカッとした。そして貝殻探しをやめてプールエリアに引き返した。

ビーチ沿いの屋外レストランでは、レストランのボーイたちがパーティーの支度をしていた。 芝生の上に大きな丸いテーブルがたくさん並び、その上に、赤、黄、緑、薄紫と、色とりどりのクロスが掛けられて、 華やかな雰囲気だった。 掛けたばかりのクロスが風に大きく煽られると、ボーイたちは慌ててその上にナイフやフォークをセットして、重しにする。 これまた色とりどりのナプキンも、白い椅子の前に並べられた。それは見ているだけでワクワクするような光景だった。

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