ガーデンウィングのプールでしばらく遊んでいると、アラビアの子供たちがやってきた。
5歳くらいの男の子が一人と、12歳位の女の子が二人。スライダーを滑ったり、泳いだり、歓声をあげている。
そして、それをプールサイドで静かに見ている女の子いま一人。どうやら弟の監視を仰せつかっているらしい。
歳は11か12くらい。黒い長袖のTシャツに黒い長ズボン、それに黒い革靴を履いている。
頭にはレースの縁がついたピンクのスカーフ。イスラム戒律スタイルの入門編といったスタイルである。
アラビア人。彼らの姿は昨夜のレストランでも大勢目にしたが、彼らはリゾート内でも大メジャーであった。
タイのプーケットでは一度たりとも見かけなかったのに、マレーシアは同じイスラムの国だからだろうか。
プールサイドのあちこちを、真っ黒な長いマント (チャドル) を着た女性が歩いている。
くっきりとした大きな目、長い黒々とした睫毛、高い鼻。その顔立ちは見事なまでに整っている。
もっとも、顔が見える人は少ない。彼女たちの多くは、顔までもすっぽりとスカーフで覆っているからだ。
スカーフの合わせの細い隙間から、辛うじて目が見えるだけ。
どうかすると、その隙間の上に更にサングラスをかける重装備ぶりである。
成人女性の服装を除けば、アラビア人もうさぎたちと変わらない、普通の人たちであった。 彼らの多くは家族連れで、ラササヤンやゴールデンサンズのプールサイドを一家で仲良く連れ立って歩いている。 別に一夫多妻制でもないし、子供思いのパパと、屈託のない子供たちの服装はごく普通。 母親たちは手首にコンパクトカメラをぶらさげ、ときおり夫と子供たちを並ばせて写真を撮る。 部屋のベランダに下着を干しちゃったりしているファミリーもいる。 ほんとに、どこといって変わったところはない普通のファミリーなのだ。 ただ一点、ママの服装が、黒ずくめであることを除いては。
今は普通の水着を着てプールで遊んでいる女の子も、いずれ母親同様チャドルを着るようになるのだろうか。 子供たちが大きくなる頃には、イスラムの戒律や習慣も少しは今と変わってくるのだろうとは思うが、 ピンクのスカーフを被った女の子を見ると、やはりそのうち全身を黒で覆うようになるのかもしれないとも思う。 海外の開放的なリゾートで思う存分遊びまわった彼女たちが、はたして将来、あの黒いチャドルの下に収まりきれるや否や。 うさぎにはなんとも想像がつかない。