いつ眠ってしまってもいいように、夕方のうちに、コムタのマクドナルドで子供たちには食べさせておいた。 ジョージタウンからホテルに帰り着くと、バスの中で眠っていたチャアとネネはすっかり目が覚めてしまったようだが、 もうお腹はいっぱいだと言うので、またしてもきりんとうさぎだけで食事に行くことにした。
夕食はエデンフェリンギのフードコートで食べようと、ホテルロードを渡って歩いていくと、 昨日までは空き地だったところに、大きなテントがいくつも張ってあるのに出くわした。 それを目指してマンションから、三々五々、ぞろぞろと人が繰り出してくる。 どうやら、今夜はここで市があるようだ。週末だからだろうか。うさぎたちもちょっと中を覗いてみることにした。
最初に見たのは衣類のテントだった。広〜いテントの中に、所狭しと服・服・服! 子供のワンピースが500円位、大人のサンドレスが1000円位。 5年前ならビックリした価格だろうが、最近はこの程度の価格なら日本でもお目にかかれる。
それから、食料品のテント。ジュースの試食コーナーで妙な味の飲み物を飲んだ。
黒糖のジュース、クリのような味のジュース‥。甘さが、ちょっと日本人の好みとは違う感じである。
その脇の「一袋RM1(30円)で6つ買うと一個おまけ」というスナックはちょっと安いような気がしてついついそそられ、
様々な種類を取り合わせてどっさり買い込んでしまった。後で食べてみたら、違和感のない味だったのでほっとした。
果物のテントでは長細いパイナップル、長細いスイカを売っていた。もしかして、とドリアンを探したが、残念、なかった。 代わりにきりんはバナナを買った。普通の味だった。
一番奥は雑貨のテントだった。台所用品など、ちょうど100円ショップのような品ぞろえ。価格も同じくらい。 ここ数年の、日本の価格破壊は凄まじいから、こういうところにきても価格に驚けないのがまことに残念である。
さて、フードコートに行くと、半分以上の店は閉まっていた。どうやら、ここは主に昼食の為の食堂らしい。 うさぎは昨日食べなかった汁そばが食べたかったのだが、そのコーナーも閉まっている。 しかたがないので、うさぎたちはアーケードの中の食堂へ行くことにした。
そこは、その粗末さが妙に懐かしい、小さな食堂であった。
何を頼もうか、と調理場の上のメニューを見上げたが、マレー語でさっぱり分からない。
仕方なく調理場を覗き込むと、ナンを焼いている男がいた。ナンが好きなうさぎは早速注文した。そして、
"I want Mee in the soup" (汁の中に入っている麺が欲しい)と身振り付きで言ってみると、何とか通じたらしい、
テーブルにつくとしばらくして、どろどろのオレンジ色の汁の中にふやけた麺が入った代物がでてきた。
その色を見て、うっわー、辛そう!!、と思ったが、食べてみるとそんなに辛くはなかった。ただ、中の具が変わっている。
麺とゆで卵が入っているのはいいとして、あとは何だか分からないものがごちゃごちゃと入っている。
見たこともない形のキノコとか、油揚げに似た甘いものなど。
嫌いな味ではないので、それでもうさぎは食べたが、きりんは口にしなかった。
きりんという人は、食べなれないものは食べない人なのだ。
ひたすら彼はナンを食べ、フレッシュオレンジジュースを飲んだ。
食事を残すのもいやなので、うさぎはきりんの分まで汁そばをすすった。
帰り際に見ると、さっきの大テントの近くには、小さな露店がいくつか開店していた。
切った果物を客の好みに応じてパックに入れて売っている店もある。
珍しい果物もあったので、買ってみようかなと思ったがやめた。
ちょうどその頃、お腹が痛くなってきたので、早くホテルに帰りたかったのだ。
「お腹が痛い」とうさぎが言うと、
「ほら言わんこっちゃない。食べなれないものを食べるからだ」ときりんが言った。
グアムで下痢腹になって寝込んだきりんには言われたくないセリフである。
うさぎは悔しくて、それきり「お腹が痛い」と言うのをやめた。